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【レポート】HUMAIサマーセッション2025 開催報告

【レポート】HUMAIサマーセッション2025 開催報告

2025年9月、千葉県成田市・湯楽城にて「HUMAIサマーセッション2025」が開催されました。

HUMAIメンバーが初めて顔を合わせた本イベントには、全国各地および海外から多様な分野の研究者や実践者が集まりました。対話・発表・議論を通じて、新たな発想とコラボレーションを生み出す3日間。その様子をダイジェストでお届けします。

開催日:2025年9月6日(土)〜8日(月)

会場:千葉県成田市・湯楽城


Day 1

HUMAIメンバーたちが千葉県成田市・湯楽城に集い、サマーセッションが幕をあけました。

「つながり自己紹介」で自他を見つめる

日本財団HUMAI研究プロジェクトを行う国立情報学研究所の宇野毅明教授より力強いメッセージが共有されたのち、つながり自己紹介が行われました。

発表者は自身の専門領域について語り、それを聞いたメンバーたちが質問を重ねていきます。自己紹介の場でありながら、自らの潜在的な問いが浮かび上がる場としても機能しました。

参加者の声:

⚫︎HUMAIコミュニティのキックオフとして対面で話せる機会があったことで、これからの活動で切磋琢磨しながら研究できる仲間が作れたことが嬉しかった。

⚫︎自分の研究のヒントが実際に得られた。価値のある時間だった。

夜ゼミで徹底討論

夜になると、湯楽城自慢の湯浴施設での入浴時間が設けられました。それぞれが一日の緊張をほぐしながら、思索を整理することができたのではないかと思います。浴場内で引き続き議論を繰り広げたメンバーもいたようです。

入浴・夕食後は「夜ゼミ」を開講。議題を提示した代表者が進行を務め、参加者の考えを引き出しながら議論を展開する自由形式のゼミです。各テーブルにはトークテーマを記した紙片が置かれ、「医療」「哲学」「社会制度」「芸術」「技術」など、幅広い分野を横断する議題が並びました。参加者は会場を巡り、関心を持った議題のもとに集まり、席を移しながら討議に加わります。

医療分野では「AIとナラティヴ・ベイスト・メディスン」「AI×グリーフケア」、社会・政治分野では「民主主義とAI」「自由意志は存在するか」、哲学領域では「AIに怒りは必要か」「AIは悟りを開けるのか」といった問いが交わされました。さらに「AI×アート」「AI×スポーツ」など、人間の身体性や感情、創造のあり方を問い直すテーマにも関心が寄せられました。

参加者の声:

⚫︎夜ゼミや議論会は移動も自由でかなり活発なディスカッションを行うことができた。

⚫︎テーマについて異なる視点(分野)で意見を交わすことができた。


Day 2

ポスター発表

早朝には希望者による朝散歩。朝食後、9時からポスターセッションが開始しました。午前中は奨励金A*メンバーがポスター発表を行い、昼食後には奨励金B・C*メンバーが続きます。

*人文社会系の学生がAIの活用や自身の研究を深めることを支援するHUMAIの奨励金制度。奨励金Aは年間最大28万円相当、奨励金Bは100万円相当、奨励金Cは250万円相当の支援があります。

*奨励金Cのメンバーは、7月に行われた最終審査会にて3名選出されました。

各発表者は自身の研究内容やAIと人文社会系の融合に関する見立てを提示。発表者以外の参加者たちは、関心のあるポスターの前で質疑や意見交換を重ねていきます。

ポスターの前では専門分野を越えた交流が生まれ、相互作用のなかでそれぞれの問いが精緻化されていきました。また、専門外の参加者にも伝わるように言語化を試みることで、発表者自身にとっても研究内容への理解がいっそう深まる機会となりました。

参加者の声:

⚫︎口頭発表と比べて、リアルタイムに議論しながら発表できるポスター発表の方が専門知識のない聴衆への発表形態として優れていると考えているため、ポスターセッションはとても有意義に感じた。

⚫︎自己紹介やポスターセッションは新たな研究のアイデアが生まれたというより自他を見つめ直す良い機会だった。

河野慎先生によるAI講義「Physical AIのトレンド」

夕方には、ZEN大学 講師/東京大学松尾・岩澤研究室 特任助教の河野慎先生によるAI講義を実施。自動運転やヒューマノイド開発の現状と今後の展望が提示されました。これはLLM(大規模言語モデル)に関心を寄せていた多くの参加者にとって、AIの物理的実装への視点が得られる契機となったようです。

講義後には長時間にわたる質疑応答が行われ、河野先生とHUMAIメンバーの間で継続的な議論が生じました。

参加者の声:

⚫︎AIの向かう先を知ることができてよかった。

⚫︎議論会や河野先生の講義など各コンテンツが相互に補完しながら自分とコミュニティと向き合う時間になり、アウトプットとインプットのバランスが図られている。

サマーセッション2025 最後の夜ゼミ

18時からの夕食では、各テーブルで和やかな交流が生まれました。食後は例によって湯浴施設へ。

そして本イベント最後の夜ゼミⅡでは、再びゼミ形式での議論を実施。前日のテーマに加え、「医療×AI」「風景×AI」「軍事×AI」「LLMを用いた社会シミュレーション実験」など多様なテーマが展開されました。HUMAIの今後の企画案や、共同研究のアイデアをめぐる活発な意見交換も行われました。


Day 3

最終日も希望者による朝の運動からスタート。

3日目のメインプログラムは、合宿の集大成となる「議論会」です。

AI×人文社会の未来を語る「議論会」

事前に寄せられた70件にのぼる議題を類型化してホワイトボードに掲示し、参加者は各自の関心領域に沿って議論を展開しました。AI倫理や創作支援、研究支援ツールの未来など、扱われたテーマは多岐にわたります。

昼食の時間にはお弁当が配られ、参加者たちは食事を楽しみながらも意見交換を継続。互いの研究や関心分野について語り合う姿があちこちで見られ、終始にぎやかな雰囲気に包まれていました。

参加者の声:

⚫︎決まった構造がなく自由だったので、思いもよらぬ方向に議論が進んで面白かった。

⚫︎他のグループの議論を聞くのも刺激になった。

閉会式

昼食後には全体総括が行われ、3日間にわたる「HUMAIサマーセッション2025」は幕を閉じました。

メンバーを代表してサマーセッションの振り返りを共有する露口啓太さん

全体総括を行う宇野毅明先生

知的な共創を支える「HUMAIの場」

HUMAIサマーセッション2025は、AIをめぐって多分野の知が交差する思索の汽水域に立ち、それぞれの立場から人間や社会を見つめ直す試みとなりました。

今後は、オンライン定例会や宇野毅明先生が主催する議論会などを通して、より深い対話が生まれる場づくりを進めていきます。とりわけAI技術の進展により各分野で進行する「方法論の変革」に着目し、インプットや実践の機会を設けながら、AI時代にふさわしいアカデミアのかたちを模索し、実践していく予定です。

この合宿で生まれた問いや仲間との交流は、今後の研究や実践のなかで新たな展開を生み出す契機となるでしょう。新しい知の地平を切り拓くために、これからも日本財団HUMAIプログラムの挑戦は続きます。

(文責:HUMAI事務局)

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