ZEN Mathematics Center

ZMCとは

ZMC(ZEN Mathematics Center; ZEN数学センター)は、数論幾何学を中心とした現代数学や、コンピューター言語を用いた現代数学の形式化(formalization)の推進と発展を目指して設立された国際研究所です。

OUR SCOPE

数論幾何学は整数論の様々な問題を代数幾何学的な手法を用いて解明することを目指す現代数学の一分野で、世界中で研究が進められています。その中でも、いわゆる「遠アーベル幾何学」という分野、特にアルゴリズム的な遠アーベル幾何学では、日本の研究が世界をリードしています。一般的に言って、現代数学の進歩はスピードアップこそすれ、衰えることはありません。そのため、それはますます技術的に難しいものになってきています。その一方で、最近ではコンピューター言語による証明支援系の研究が進み、実際に数論幾何学の定理をはじめとして多くの現代数学の理論が「形式化」されるようになってきました。ここでいう数学の理論の形式化とは、定理やその証明などをコンピューターのプログラムに書き換えることです。これは現代数学とコンピューター科学が歩みを共にしている一つの現代的な例ですが、現代社会ではそのほかにもいわゆる人工知能(AI)と数学の関係も重要なトピックです。私たちはこのような状況を踏まえて、遠アーベル幾何学に代表される数論幾何学などの現代数学や、その形式化を推進する活動を通じて、現代社会と数学の新しい関係を創造していきたいと考えています。また、現代数学やその周辺領域での活躍を目指している世界中の若い研究者たちへの支援なども行っていきたいとも考えています。

MESSAGE

ZMC所長 加藤文元

21世紀の今、現代数学は過渡期を迎えているのではないか?そして、それを未来のあるべき姿に導いていくのは、専門的な数学者ばかりではなく、実は現代という社会に生きているすべての人々なのではないか?

従来の現代数学は、専門的な数学者たちの日々の研究によって推進されてきました。その一つ一つの専門分野では極めて高度な専門的研究が行われてきました。今でも研究はどんどん進んでいます。そして、それと同時に、現代ではコンピューター科学が高度に進み、その中で純粋な現代数学との関わりも次第に膨らんできました。それだけでなく、昨今の人工知能(AI)の研究は、ますます現代数学を社会に結びつける牽引力となってきています。

このような新しい動きが、現代数学がより新しい学問へと変わっていくきっかけになっていくように、私には思われます。現代数学は、例えばコンピューター科学やディープ・ニューラル・ネットワークや大規模言語モデルなど、本来数学に近いがあまり現代数学の研究に従来は関わってこなかった分野と緊密に連携するにようになってくると思います。

人工知能の研究が現代数学に及ぼす影響は、極めて大きなものです。例えばディープラーニングのように、従来の数学のやり方ではその内部を詳細に理解することが難しいものを、数学が「理解する」とはどういうことか、という問題があります。この問題について真剣に考えていくことは、数学をその根本的な基礎から変えるだけの力を持つことになるかもしれません。また、AIを通じて、数学はますます現代社会の諸相とインタラクティヴになっていくことでしょう。

現代数学やその関連分野の振興という目標は、単に研究振興という側面だけでなく、現代社会における理論研究のあり方という側面においても重要な点を示唆するでしょう。本センターは理論研究の社会への発信や、そのフィードバックを通じた研究者のキャリア形成と社会還元という視野からも、多様な活動を主催しサポートしていきたいと考えています。