――インタビュアーの遠藤諭です。

――大石和恵です。

――本日は2024年8月20日です。これから谷井玲氏のオーラル・ヒストリーのインタビューを、ドワンゴ東銀座オフィスで行います。よろしくお願いします。

――今日は、メールでもお送りしたんですけど、いくつか何部かになっているんですけど、一番お伺いしたいのは、やっぱり魔法のiらんどの立ち上げから、携帯、インターネットがガンガン来る頃がもちろんメインなんですけど、最初は谷井さんご自身のこととか、89年にティー・オー・エス（：株式会社ティー・オー・エス）って会社が。だから、魔法のiらんど以前についてまず伺って、これは魔法のiらんどのその後のお話に関係しそうなこととか、その部分を特に伺えればということで、それ自体をそんなにものすごく深掘りする必要はないと思っています。その辺りからうかがえればと。

谷井：1989年4月に、ちょうど27になる年、まだ26だったんですが、その頃にNTTデータ（：株式会社NTTデータ）を中心とした技術系の会社を作りました。2名で立ち上げて、その当時NTTデータ通信という、まだNTTからデータ本部が独立してできた状態のNTTデータからの仕事でしたので、非常に効果的にNTTデータさんからの仕事が増えて、10年後にあっという間に100名くらいになる会社になりました。
ちょうど今お話が出てくる魔法のiらんどは1999年の12月に作っているんですが、その前の10年前の自分が26歳、27になるときに、これからは技術の会社を作って大きくなっていくんじゃないかということで、作ったティー・オー・エスという会社、1989年。これがたまたまNTTデータの性能評価という、技術を評価するような分野の仕事をやらせていただき、技術者がどんどん集まっていったという経緯があります。
当然技術の会社として進めている中で、新規で仕事をどんどんやっていきたいという、新規開発を作りたいというのがあって、その会社はティー・オー・エスという会社だったんですが、トップ・オブ・エス＝システム、サービス、スペシャリストにおいてトップとなることを目標とするという会社で作ったんですが、開発だけやっているのではなくて、何か自分たちの新しいものを作りたいねということで、ティー・オー・エスPというプロジェクトを開発していきたいということで1個目の新規事業を立ち上げました。そして2つ目、3つ目、4つ目、5つ目が実は魔法のiらんどという新規事業なんです。私が作った会社はNTTデータからの仕事で、金融系の開発とか、例えばKADOKAWA（：株式会社KADOKAWA）さんの開発、ドワンゴ（：株式会社ドワンゴ）さんの性能評価、ものすごいトラフィックが来ているから、それをどういうふうに性能評価を見てレスポンスをよくしていくんだという評価をやっている会社の仕事だけではなくて、自分たちで独自にサービスを作って打ち出したいという、そういう目標があって、2年に1回予算3000万円、3000万円がなくなったら終わり。それが2個目、3個目と、失敗をしていくわけなんですが、最初に作るのはティー・オー・エスPという、スピーカーが声を出すような面白いものを作ったんですけど、全く売れなくて、4年後新しいものを作って売れなくて。
4番目がインターネットがちょうど流行りだしてきたプロバイダー事業をやって、それも大手と比較すると全然ダメで。たまたまそういう仕事の経緯で、NTTデータがNTT本体の移動体通信事業部からiモード（：NTTドコモが1999年2月に開始した携帯電話向けインターネットサービス。メールやウェブサイト閲覧が可能で、日本で初めて本格的なモバイルインターネットを実現した。NTTドコモが1999年2月に開始した携帯電話向けインターネットサービス。メールやウェブサイト閲覧が可能で、日本で初めて本格的なモバイルインターネットを実現した。）というサービスを打ち出したいということで、そのiモードの性能評価とか、iモードをどういうふうに作ればつながっていくんだというのを技術開発として仕事をいただいていました。
ということで、iモードの最新の技術が私のところにあったので、そのサービスを使って何かできないかというのが5番目の開発行動、ティー・オー・エスP5と。それが簡単に誰でも携帯電話でホームページを作ったり日記を書いたりできるようなサービス。魔法のiらんどというサービスなんですが、それが1999年12月にサービスを開始した。これが普通の流れです。

――性能評価の会社。それから開発もされた。でもNTTデータさんともずっとお付き合いがあったんだけども、99年iモードが始まるぞというのは事前に内部まで分かっていたみたいな。

谷井：その通りです。その技術もうまく活用しながら、自分たちの会社のサービスとして何かしら楽しいことができないか。iモードで最初作り始めたのがスケジュール管理というのがいいじゃないかと。スケジュール管理をちょっと作ってみたんですけど、スケジュール管理なんて面白くないなと。でも1999年の2月にiモードが発表されてるんですね。まさに夏野（：夏野剛）さんが前でバーンとプレゼンテーションをして、その上、榎パパっていう榎（：榎啓一）さんが上にいて、2月に発表して、自分たちもiモードで何かできないか、こんな6行と8行ぐらいの白黒なもので、たまごっちみたいなのをここに作って、餌をやったら育っていくようなゲームをやろうと。それがあいぴっていう、魔法のiらんどの中にいるキャラクターがあいぴなんですけど、あいぴっていうのはもともと、iモードの中でたまごっちみたいに育てていくものを実は考えていたんですけど、それもなかなかあまり面白くないし発展性がよくない。で、そっかと。我々性能評価チームだし、ドコモ（：株式会社NTTドコモ）のiモードで作ったホームページがあるときにはパソコンでも見れるし、あの当時のau、WAP（：Wireless Application Protocolの略。携帯電話でウェブサイトを閲覧するためのプロトコル。auが採用していたが、インターネット標準のHTMLとは互換性が無かった。）っていう全然違うインターフェースのauでも自動的に見れる。で、J-PHONEが出てきた。J-PHONEでも見れるっていうのを自由にあらゆるサイトでホームページができるっていう。それを作ろうよと。というので実はデータベースシステムを作ったんですね。魔法のiらんどっていう名前をつけて、その当時はホームページを携帯で作って、日記もなくて、掲示板っていう機能が昔あった。掲示板機能だけをつけて。で、世の中にポーンと出して、外でどんな反応するんだろうって調べてみたんです。これ1999年の12月なんで、まだiモードのほとんどまだ、初期の頃ですよね。2月に出て、iモード本当に苦戦して、なかなかiモードが普及していない。だから、ほとんど誰もやらないのかなと思っていたところ。初日、そのサーバーのアクセスが300だったのが、1週間後に1日10万。一か月後に1日40万PVになったんですよね。3か月後に120万PV。最終的に、遠藤さんがご存じだったあの頃は、月間33億PVという。1日にすると、1万（：億？）PVというトラフィックを出すようなものに勝手に広がっていったんです。

――BBSだけで、そこまでいったんですか？

谷井：当然、ホームページを作る機能の他に、全然それだけじゃなくて、機能が怒涛のごとく、どんどんどんどん増えていくんですけど。だいたい、グッと増えると、少し慣れてくるとちょっと下がって、大体1週間に2～3個増えていく。それが120万までいった時点で、面白くて楽しくて、自分が反応したものがどんどんどんどん大きくなっていくんです。最初は技術研究の一環として作ったものが、ぽんとインターネットに出したところ、それを誰かが見て、300回のアクセスしかなかったのが、勝手にどんどんどんどん広がっていくんですけれど。

――要因は、iモードで作れるサービスがPCでも見れるとかWAPでも見れるって話だけど、それだけ広がった要因って、そういう技術的な、他にはそういうのはあんまりなかったんですか、他でも見れるって。

谷井：1か月後ぐらい、出た1週間後ぐらいに、こういうサービスないのかなっていうのをわっと調べたんですけど、2、3個あったんですよ。

――やっぱり、どこから入っても見れるものが。

谷井：いや、どこからも、入ったら見れるものじゃないんですけど、iモードでホームページみたいなものを作る、ブログみたいなものを作るというのがありました。白黒で本当に8文字、6文字のこんな小さいところにやろうという考えを出した人は世の中に2社ほどありました。

――そこまで伸びた理由は何ですか？　PCでも見れるというような技術的なことなのか、もっと他の要因があったのか、何が引っ張ったんですか。

谷井：それで自分たちももともとあったから。しかもそこがちょこちょこ伸びていっているんですけど、技術的にそこはホームページ1枚作って2枚目のまたページに移る、今は普通に繋がっていくじゃないですか。それは技術的に無理でプッツン切れるんですよ。HTML1.0とか今2.0という技術になっていて、繋がって全部1枚目から2枚目、3枚目というのは、自動的につながっていくんですけど、今ホームページ、毎回プツプツと切れてないですよね。
それ、iモードは毎回切れるんですよ。毎回URLを叩かなきゃ、他のところはダメだったんですけど、魔法のiらんどはその裏側でつなげるスクラッチパッドエリア（：Web上で一時的なデータやコードを保持できる機能のエリア。）というエリアをきれいに持ちつつ、画面上にそういうのを仕込むものを使ってつなげていったことが一番大きな要素で、使い勝手が良かったんですけど。当然、後で時間をお見せしますけれど、我々もなぜこんなに大きくなっていくんだと、何が起きたんだというのは、性能評価チームとしてあらゆる分析をするんですけれど、その原因がある程度わかって、じゃあこれだということで進めていったのが、このグラフにつながっていくんですね。小さくて見えないかもしれないけど、何枚かコピーをしている。これが、魔法のiらんどの■■（：声が重なっていて聞き取れない）。

――1月2日から。

谷井：X軸のところが1月の、実際12月の17日で、左側の数字は点になって見えないと思いますけど、これX軸はずっと1月から。

――1月ってのは2000年の1月。

谷井：この前が1999年の12月。

――になるんだけど、今ここでは切れてる。

谷井：うん、切れてます。1月2日からずっと行って、X軸をずっと下がるのが、だいたい1年ぐらいありますよね。で、3月まで。で、縦軸が1日のヒット数なんですよ。だから、トラフィック数。で、グラフが下に、折れ線グラフが一番下、真ん中、中間、そして4つあると思いますけど、一番下がJ-PHONE、スカイウェブっていうサービス。トラフィック数です。そこから上がauですね。auはWAPという、今はHTMLインターフェースで全部同じですけど、WAPというプロトコルのトラフィック数。その上がiモード、ドコモの1日の魔法のiらんどのトラフィック数が毎日グラフに出ているんです。それのトータルが一番上のところ。この線をずっと、このラインを見ていくと、上にこの日に何月何日何をサービスしたか、全部出てますよね。実はこのサービスが出るとパカーンと上がって、またしばらくすると落ちていくんですよ。また落ちそうなタイミングのリズムを取りながら新しいもの、とにかく何でもいいんですよ。
こんなの出たよ、あんなの出たよ、こんなの出たよ、あんなの出たよと、本当に魔法のiらんどがあたかも動いているかのように見せて、このグラフィックをグーッと伸ばしていくんです。

――サービスが始まることがコンテンツみたいな感じ。

谷井：そうそうそう。それと上のところに1月26日、一番トップにある。サーバーを増設しないと、下も全然CPUは100%でへばりついて上がらない。増設をすると当然グイングインと上がるところもあるんですけれど、上のところにもラルク（：L'Arc～en～Ciel）のグッズを販売してみようとか、3月4日から日記を書くだけじゃなくて、プリントできるようにしてやろうかとか、2月26日からピカピカシート販売、なんとかオークションサービス開始とか、上に大きなイベントも作り上げて、中段あたりにもシールを配布して作って、2月1日、九州ウォーカー、これKADOKAWAさんですよね。九州ウォーカーとかKADOKAWAさんの雑誌も今全然ないんですけど、東京ウォーカーとかにiモードでこんなホームページを作ろうという雑誌がいっぱいあったんですよ。それが100個200個ってずっといろんな面白い日本中のホームページがiモードのホームページがあるんですけど。それが全部、魔法のiらんどのホームページである。実は。そう、その魔法のiらんどが作ったホームページで。
で、この急激なトラフィックがグッと伸びるところで、実を言うと、自分が、遠藤さんがもし、魔法のiらんどという無料のサイトを見つけて、ホームページを何か作ってみようと、iモードでこんなんできるんだと思って、触ってみると、やっぱり自分で作っただけじゃ面白くないじゃないですか。誰かに何か教えたくなるじゃないですか。で、作った後に必ず誰かに教える機能っていうのがあって、それを10人のメールアドレスを叩くと、ピコッと遠藤さんができたホームページを完成っていう。10人にお知らせする。で、遠藤さんが教えるんじゃなくて、あいぴっていうキャラクターが、遠藤さんが教えるんじゃなくて、キャラクターが教えるよっていう機能があって、これがものすごいね。10人に、遠藤さんが作りまして、10人の友達にわーっと送った。そうしたら、ホームページを見たら

――俺も作ろう、と。

谷井：あの当時は、こんなイタズラメールなんて無い時代だったんですよ。

――不幸の手紙みたいなやつがありましたよね。ちょっと例が悪いですけど。

谷井：でも今みたいに変なメールが無かったんですよ。だから、良いメールばっかりなので。

――バトン的なメールですよね。

谷井：遠藤さんのホームページができたよ、あいぴっていうキャラクターが見て見て見てって楽しいよって言うと、ついつい押しちゃう。

――それは何年なんですか？

谷井：これがもう初っ端ですね。

――もう一番最初からそれをやってる？

谷井：一番最初からです。実はそれでこの加速度を増していって、下がってるところには新たなものを入れるんですよ。どこかでちょっと空いてるところがあると思うんですけど、それが検証できるかどうか、開けてみようって言ったら本当に下がっていったでしょ。でもこんな、ここにこう小さいのがこうやって全部書いてありますね。

――データがあれば拡大して。

谷井：小さいこの白い枠は、こんな機能を出した、作ったということを示しています。で、ブック機能っていうのが3月の10日にできてますね。これは小説機能ですね。だから12月にホームページだけの機能でできたんだけれど、掲示板、日記機能ができた。

――その今のあいぴの話も面白いですね。

谷井：で、エキスプレスっていうのが2月3日にできてます。エキスプレスっていうのは、自分のホームページを作ったときに、地域っていうのと、最寄りの駅ってどこっていうのを入れておくんですよ。そうすると、その駅にどんなホームページがあるかって、日本中の駅につながってる魔法のiらんどのホームページが見れて、立川だったら立川、で国立、ピッてってやると国立のホームページがまた集まってて、そこに伝言板があるんです。だから、リアルな駅の伝言板と同じように伝言板みたいなのが作られて、2月10日にカラー対応してるんで、ここでカラーが出たんですね。本当にグレーだったのがカラーになって、2月19日に魔法のiらんどの遊歩道、3月10日にブックオブジェクト。ブックオブジェクトっていうのが「恋空」とかで出ました。だけど恋空が出たのは2006年ですよね。これはまだ2000年ですよね。だから6年かかってるんですよ、実は。
みんな恋空とか魔法のiらんどってすごいなと思われてるんですけど、実はこんな1年間努力をしていて、ほとんど寝ないでやって、ブック機能、スーパーGM機能、料理オブジェクトも、料理機能もホームページと同じように作りました。こういう料理を自分の冷蔵庫に入れておくとこんなものが作れるとか、こんな料理を作るよという。この後、料理だけのサイトとして、この機能はもっと集約されて、すごい機能で上場していった会社がありましたけど、クックパッド（：クックパッド株式会社）かな。クックパッドはこの時に影も形もなくて、まさにクックパッドの機能ですね。そこだけに特化すればよかったんでしょうけど、スーパーGMが4月1日、4月19日、4月24日に投票オブジェクト。ブックマークを自分の携帯の中に入れて、いろんな人のブックマークが入っているんです。

――この時の主なユーザー層と、それとやっぱりこれは御社がお仕事としてやってるわけなので、お金の流れっていうんですかね。ビジネスモデル的なこととかはどう考えてやられてどうなったんですか。その客とお金、サービスの話は。めちゃめちゃ熱さがビシビシ伝わって、しかもそれを作り込むの大変だろうなってものすごく分かるんですけど。

谷井：そうなんですよ。このグラフのように上がっていって、無料でやってしまったんですね。日記機能ができた、小説機能ができた、いろんな機能があって掲示板でやり取りをしていて、我々がこのデータベースの小説を、この機能をそもそも作るためには、どんな機能が欲しいかとか、ユーザーさんが何を考えているかって、今では見れないのかもしれないですけど、データベースを直結で、あらゆる人たちが書いている、1秒間に3000件のトラフィックがある、10秒間に3万トラフィックがあるやつが、データベースを全部一堂にすると出てくるんですよ。こんな書いている、いろんな人の言葉がワーッと出ていて、こんな機能があったら欲しいね、あんな機能があったら欲しいねって言っている声を見ながら、よし、じゃあこの声があったから6時間後にサービス出してやろうぜみたいな、やり取りをやってて。まさにそのどういう風なお客さんが見てくれてるんだろうっていうところで見たら、やっぱり男性のアダルトサイトみたいなのがあったでしょ。で、そっちのアダルトサイトにどんどん人が群がってる部分もあったんで、自分たちがそういう気持ちで作ってないので、アダルトサイトを全部もうなくそうと。で、アイポリスっていう名前のものを作って、アイポリスっていうのが魔法のiらんどのチェックを全部してくれて、見ながら男性とかでエロとかアダルトとか、あと死ぬとかそういう嫌な言葉を自動的にコンピューターが判断して、そのものだけが出てくるサイトを画面を見ながらチェックをしてくれるアイポリスっていう軍団がいてくれて。そのアイポリスが魔法のiらんどを健全にしました。大きなのはやっぱ半分ぐらい消しましたね、最初。

――半分も。

谷井：半分ぐらいありましたね。アダルトとか。

――要するにこれって一大インフラというか、エコシステムもすごいインフラじゃないですか。だからもう何でもあるわけですよね。で、それでヤバめのものも結構あった？

谷井：結構ありましたね。奈良県警にお願いして、これは谷井さん、これは本物だから我々がやってくれるっていう。当時警視庁とかもこういう犯罪、デジタル犯罪が全然わからなくて、魔法のiらんどと組んでいろんなことをやってて、そしたらそのホームページにひし形のマークがついてるのが、それが右左やって、何かあって、何かあったらこっちに連絡して、ああしてこうして、昔のiモードでピッと押したら電話かかるじゃないですか。支部とかずっとあって、それが掲示板で脅迫するとかどうこう書いてあるんで、あ、マズいと思って。で、アイポリスはそれを見ると、ピッてやったりする。ほとんどリンクできなくて、これが刑務所の画面になって、今アイポリスに収監されているので、若干問題があるので、直さない限りこのホームページは立ち上がりませんという画面が出るんですよ。

――それはユーザー側から見えるのですか？ユーザーイコール作り手だから…

谷井： 遠藤さんがもしきれいなホームページを作っていたんだけど、それがアダルトとか、ちょっと危険な法律に違反するものがその上に入っていたら、それを見つけたらピッとボタンを押すと、そのフラグによってデータベースがそのままホームページに生成している。その生成の過程でフラグが立っているところは、檻の中に遠藤さんのホームページが半分ちょっと終わりっぽくみえて、全部の人がピンクボタンを押せなくて、若干の問題がある。

――その組織はボランティア的なものなんですか？

谷井： ボランティアというか、その組織は三重県にいるんですけど、障害者の人たちがいて、まさに成毛（：成毛眞）さん、マイクロソフト（：日本マイクロソフト株式会社）の社長だった成毛社長が一緒に組んで、三重県の障害者の人たちが「税金をもらって食べてるんじゃなくて、自分たちでもっと働いてお金を稼ぎたい」という想いがあって。あの時の北川（：北川正恭）知事の時代です。そういうことで障害者の団体を作って、ちゃんとそこで稼いで対価をお支払いしようということになった。
それが魔法のiらんどのチェックをしてくれて、だから堂々と魔法のiらんど社は、会社にお金を払って。障害者の人たちが集まって24時間体制で、普通の健常者はできないぐらいに、3時間、4時間たいへんな。キーボード、腰が動かない人は手を動かせる、首の方に持った人はくわえながら、魔法のiらんどの中を浄化させてくれて、かつちゃんと生活費も稼いでいた。
今も実はKADOKAWAさんでインテグラル（：株式会社インテグラル）という会社がその流れを継承しているんですけど、そこが魔法のiらんどのチェックをしてくれたおかげで、非常に健全なサイトになっていったんです。アイポリスの前に何を話していたんでしたっけ？

――ユーザー層とお金的なエコシステムですね。ビジネス面を。ユーザーとビジネス面。

谷井： それでアイポリスのおかげで若い女の子たちばっかりになった。一気に男性を浄化しちゃったんですね。なぜか女性が集まるところに男性が入ってくるんですけど、怪しい男性が入ってくる。無料でやって、しかも技術的な評価として、自動的にiモードで作ったものがauでも出て、PCでも出て、実際はホームページなんか影も形もなくて、データベースにデータが入っているだけなのに、自動的に生成してそれぞれのインターフェースに合わせて作り出している。我々的にはとてつもないデータベースシステムだと思っているものを、そういう変な人たちが扱うのは嫌だと。だから女性だけにしようということになった。
それで非常に危険なサイトをアイポリスがチェックしようとする前に、私のところに連絡が来たんです。奈良県警らしいんです。警視庁に話したら、「これ奈良県警の管轄なので、これ本物なので、谷井さんのところのアイポリスがしたら大変なことになる、奈良県警がやります」ということで、なんとか組のサイトを消してもらったんですね。そのくらいこの時はすさまじい状態で、女の子だけに限定していったんですね。
そうすると結果的に健全な男性が入ってくるんですね。アダルトグッズを作っているサイトが、携帯でこういうアダルトグッズを販売しているECサイトみたいなものを作るんですよ。電話で予約するような。そんなものを無料のサイトでやってくれるなんて、これはどうかと思って、パシッと切ったら電話がかかってきました。アイポリスに削除されたということで。「これは悪ではない、僕たちは法律に違反しているわけでもないし、きちんと世の中のためにそういうアダルトグッズを売っているんだから」という話でした。でもこれは無料でやっていたから、「ちょっと約款をちゃんと読んでください」ということで対応しました。
そういう流れがこのグラフのところになる。急激に増えている。この部分でどこでこれをやっているかというのも書いてあるんですけど、そこで一気に減ったり増えたりして、女の子は80%、最大600万人くらいまで、KADOKAWAさんに売却する前までは600万人くらいはいっていたはずです。月間33億PV、600万。その当時、日本の人口も色々調べていて、我々をターゲットとする10代から20代後半の日本の人口が2000万人いて、半分が女性。その2000万のうち何パーセントを獲得しようかということで、この数字の中から自分で計算した。

――2000万のうち600万。すごいじゃないですか。

谷井： そうなんですよ。だからほぼ我々の独壇場だったんですね。ここにこれも、後でまたこれも細かいので、読んでもらえればわかると思いますけど、こういうシステム性能評価で、魔法のiらんどができて1年もたってないのにグラフを作って、「なんでこうなってるの？　どういう属性で、どういう人が魔法のiらんどに？　結婚している人がいるの、いないの？」とか。

――その辺もちょっと、この資料もさることながら、言葉でもいただけると嬉しいんですけど。

谷井： 女の子の血液型は何型かといっても、魔法のiらんどのホームページを作っていくたびに、ちょっとずつ、それがわかるようなインターフェースをつけていったんです。「あなたはどういう人ですか？」って、Eメールアドレスを求めて、これこれこういう性格の項目とか、そういうのを選ぶ選択肢があったりして、ピッとピッと選ぶと、個人情報が、その人たちにはわからないかのような形で、個人情報がたまるような仕組みにしていた。

――平成13年って何年ですか。

谷井： 平成13年、平成元年が1989年だから、1999年が平成11年くらいだから…

――スタートして3年後くらい。その時のホームページ数が86万5千で、登録者数が56万。3年後くらいでね。で、構成比だと10代が26%、20代が49%。思ったより年齢高いですね、実は。それがどんどん落ちていく。あ、3年後はまだ。だって平成13年ですよ。

谷井： 平成13年で出しているけど、この分析のところが前のデータを使って、これ1年間のデータで見ているんで。

――最初に、まあiモードだからね。iモードってやっぱりパケットがどんどんお金もかかっちゃうところもあるから。最初の頃はまだ20代が半分ぐらい。

谷井： そうそうそう。お姉さんがやっているので、小さい中学生や高校生でも微妙なぐらい。パケット代です、たぶん。パケ死（：パケット通信料金が高額になり、請求書を見て驚くこと。）って言葉もあったくらいで。

――僕11万円いったことありますから。

谷井：平成13年、2001年なら、やっぱり…

――本当に初期ですね、2年後ぐらいですかね。

谷井：これも平成13年、これがちゃんとした本となって、どういう特性があって、どういう機会があって、魔法のiらんどのことが全部…。

――性別も男性の方が多いじゃないですか、この2年後だとまだ。

谷井：いや、これは2年後じゃないと思いますね。

――データもっと前ですか。そっちだとどうなってますか。ほんとの最初ということ、これは。

谷井：最終的には8割ぐらいになってるんですよ。

――最終的には8割が女性なんだけど、この初期には男性が65%だし、年齢も20代。まあ典型的なテクノロジーにパッと入りやすい世代ですね。

谷井：で、完全にサイト構成とかも女性にシフトしていく。

――なるほど。学生が25%。当時、iモード、先ほどホームページを作るものとかあったって言いましたけど、当時のiモードが始まった頃の状況としては、他にはどんなサービスが賑やかだったんですか。

谷井：iモードはやっぱり全部がiメニューっていうのがあって。金融機関のサイトとか。ドワンゴさんでいうと、釣りゲームがあったりとか。そういう時で、魔法のiらんどはオープンサイトを作って、実際の公式サイトじゃないオープンサイト側のインターフェースで、全部公式サイトと同じような作りで動いてましたね。
だから、公式サイトだとドコモさんが課金をしてくれるんで、そのあといろメロミックスとかどんどん発展していく。我々は無料のサイトですね。ただ、お金はないけど、トラフィックは全然雲泥の差なんで、あまりにも1年後、きつくなって、榎木さんのところに行って、「ドコモさん、パケット代めちゃくちゃ儲かってるから、いくらかパケット代返してください」って言ったんですよ、榎木さんに。

――ビジネスモデル的には純粋に無料。

谷井：本業があるから儲かってましたけど。

――これは5番目のプロジェクトとしてうまくいってるじゃないかってことで、あんまり考えずにやってたと言うとちょっと言葉悪いかもしれない。

谷井：さすがにこのサーバー代が、一台だったのがNTTデータの大手町のサイエンスビルに全部で115台ぐらい入ってる。1ラック10台入るのが11ラックで。ちょっと忘れましたけど、すっごい金額、毎月400万ぐらい払ってました。

――サーバー代で。

谷井：サーバー代で。ニコニコ動画さんと比べたら点みたいなものですけど、携帯の。

――まあ、軽いですからね。

谷井：それでもそんだけある。400万でしょ？　で、サーバー代が2週間くらいでアウトですよ。もう2週間でアウトだから、いくらなんでも、1年も経ったら1億ぐらいの赤字ですよ。今まで10年ぐらいコツコツ貯めたのが全部消えましたからね。消えたところじゃなくてマイナスで、家帰ってもヤバいっていう。家内と給料とか話しても、お金ちょっとヤバいかもしれないと。

――その頃、会社はどのくらいの？

谷井：100名ぐらいでした。技術系の会社が全部稼いでくれていて、魔法のiらんどは全く赤字なんですよ。今までの4番目までの開発だったら、3000万で私は打ち切ってたんですけど、あまりにも掲示板とか見てると、その人たちが夢を持って楽しんで、ワクワクしながらやってて、いろんなカテゴリーのサイトができてて、ものすごくホームページ数で。
でも1年後ぐらいに、さすがに正月明けぐらいに銀行の支店長と話してきて、「なんとかなりますか」っていう話をしながら、「谷井さん何やってんの？　どうやったら儲かるの？　ビジネスモデル教えて」って。いや、全くないですよ、無料だと。ただ、広告が今何個か来てる。すごいトラフィックで、やっぱり携帯広告もどんどん普及してきたところだったんですよ。で、携帯広告入れると、数千万ぐらいが入ってきたんですよ、携帯が。そんなようなトラフィックで。
でもこっちはもう技術系のメンバーはもう「ふざけんな」と。「社長どうなってんすか」みたいな。でもその人たちも、やっぱりiらんどを見て、こんなのが生まれて、こんな子たちに感動してると。喜んでる。何とかやってる。「やってこうよ」って言うんですけど、社長的にはやばいなと思う。
で、家内に聞いたら、「私はあと10ヶ月は持たせます。その代わり10ヶ月超えた11ヶ月目には給料ください。それまで頑張りますから」って言った。もうね、それ3ヶ月ぐらいでもうダメぐらいになるぐらいの。家内にも相談して、社員に給料払っていかなきゃいけない。なんか社員数が多いと、なんか毎日で給料払ってるような感覚になるんですよ。社長は「ハンコください」、ハンコ押すでしょ。給料払ったはずなのに、一晩寝て魔法のiらんどでやって、一晩寝てふっと見たらまた「ポンポン」って出るから、「何？」って言って、「いや、給料のハンコが必要なんだ」。「え？昨日押さなかった？」「いや、1か月前ですよ」と。もうそんな追い詰められてる状態が正月ぐらいにあったんですけど。
で、そのサイトがアダルトサイトなんですよ。魔法のiらんどは女の子のために作ってるのに、そのサイトはアダルト。っていうのと、どっちかっていうと、金融、消費者金融だな、サラ金の広告と、ちょっとアダルトっぽい。でもそれ、悪いものではないんだけど、それをつけると一気に会社は逆に利益で回っていくし、トラフィックも増えてるから、悩んでたときに、またそういうときに、また世の中、来るんですよ、地獄を見させるのが。
正月、おばあちゃんかな、おばあちゃんが生後間もない男の子を背負って、女の子も手を引いて連れて、家族の方が一人、魔法のiらんどに会いに来たんですよ、社長室に。ちょっとご挨拶、「どうされたんですか」って。6歳の女の子が年長の女の子、お母さん来ないんですよ、おばあちゃんだけなんで。おばあちゃんから、「生後間もないこの2人のお母さんがちょっと前に実は亡くなったんだ」と。亡くなったんだけれど、「私の娘はおたくの魔法のiらんどっていうのでホームページを作って、子供のために毎日日記を書き続けて、掲示板という機能で日本中の人から『頑張れ』『生きて』って言われて、もうそういうので、私がんばる、がんばる、がんばるって書き続けて、病院のベッドの上でも何か書けて、最後は家に戻って、家のところで亡くなったらしいんですけれど、それを作ってた魔法のiらんどさんが無料でやってて、別に何かやって宣伝してるわけでもなく、その社長にひとこと会って、私たち家族に本当に勇気をいただきましたから、本当にありがとうございました」って、もうなんか泣きながら挨拶するだけで。
こちらは頭の中にアダルトサイトとこれどうしようかって考えてるのに。分かります、この苦しさ？　それで日記書いてるって言うから、ずっと子供が生まれた後のことを一生懸命書いてる。で、トラフィックが増えてストレージもどんどん大きくなってるのに、社員たちに、「俺たちは絶対日記は消さない」と。「この子供が大人になった時にお母さんの日記を見せられるように、絶対消さないで行こう」って決めたんですよ。そうしなかったらストレージがどんどん上がって、「社長何言ってんですか」って。いやー、本当に大変な時は2月3月ですよ。
で、その後も結構大変で、マイクロソフトの社長の成毛さんのところに行って「大丈夫？」って。「いやもう本当に危ないですね」。で、榎さんのところに行ったんですよ、最後。「榎木さん、もうドコモさんのおかげですからね」と。「こんなトラフィックで。見てください、こんな世の中にいいことやってる」。そしたら榎木さんが「わかった」と。これは言ってはいけないのかな。一つは、電通（：株式会社電通）とドコモが組んだ広告代理店をちゃんと紹介するから、きちんとしたのを入れると。ただ、パケット代を谷井さんのところに返すってことは、これはできないと。そのうちパケット代が固定になるかもしれないし、競合他社とやってくるので、パケット代の戻しを谷井さんのところにやったら、他のもやらなきゃいけない。だけど、着メロサイト、公式サイトを出してくれれば、なるべく早く通してあげる。技術もあるし。
で、魔法のメロらんどっていうのを実は作った。そのときに、川上（：川上量生）さんはいろメロミックスを作っていて、川上さんはいきなり魔法のiらんど社のところに一人で走ってきて、九段下に会社があった。で、突然のようにランニングに来て、「魔法のiらんどってすごいサイトで、ここからいろメロに誘導してくれない？」と。誘導して入ったら、一人100円払うから。それで、魔法のiらんどのトラフィックを川上さんのところのいろメロミックスに誘導して、ちゃんと公式サイトに入ってくれれば100円くれるって。1000円にしとけばよかったなと思うんですけど。それでいろメロミックスもどんどん大きくなって。

――アフィリエイトしたわけですね。

谷井：そうです。川上さんも全然してます。それで川上さんと仲良くなったんです。全然KADOKAWAさんとは別の世界に会ったんですよ。その後KADOKAWAさんとくっつくとは思わなかったですけど。
で、いろメロミックスがすごく伸びていったんで、じゃあ着メロをやろうと。そして技術者がゴロゴロいるので、どんどん今もNTSって会社で一緒にいる3人の1人に着メロをちょっと榎木さんのところに持っていって通すと。で、1ヶ月で、普通だったら1年かかってもそんな公式サイトを通してくれないのを、1ヶ月で通してくれるはずだと。そうしないと1ヶ月もウチらは持たないよって言ってきたから。そうして本当に1ヶ月で通していただいて。
魔法のメロらんどって言ったんですよ。で、いろメロミックスにも誘導してるんだけど、メロらんどにも誘導してるってことで、魔法のiらんどの無料の人たちのところに実際に広告が出て、で、音楽、着信メロディってやって、魔法のメロらんどに入れたら、33万人ぐらいまで行った。あっという間に33万人。月額300円なんですけど、33万人って1億円ぐらい入ってきて。
で、しかもJASRACに払う金額とかが2000万ぐらいだから、8000万は純利益で、魔法のiらんど100台ぐらいで、すごいトラフィック。データベースシステム、ウェブシステムやってるのに、2台のウェブシステム。ロードバランスは2個切り替えてて、上にデータベースシステム。3台のコンピュータが24時間寝ないで動いて、毎月1億円で7000万円の純利益、7500万円くらいの利益を、1年間で8億円くらいの利益を生んでくれて、もう一気に魔法のiらんどの1億円の無料は無料だったですね。だから、あのおばあちゃんが、もしその方が来られなかったら、本当にアダルトはしなかったかもしれないけど、考えると怖いですよね。

――それがどっちへ行ったかもわからないし、川上さんのランニングも、スイッチがいくつかありますね。

谷井：川上さんのところにも行きましたけど、我々も、着メロをやると。ちゃちゃっといって。でもはるかにいろメロミックスは大きくなっていってたし、川上さんはいろんな曲と曲を繋ぐとか、いろんな面白いことをどんどんやってたんで、だから、我々は、やったとしても、着メロで何かをやるとか、ゲームサイトでやらないので、ということで、魔法のiらんどの。

――ちょっと質は違う

――それ、着メロが2001年？

谷井：2002年、2003年か。すみません、ちょっとインターネットで言えば、魔法のメロらんどがサービス開始。うん。で、auも魔法のメロらんど。そっちも始めた。で、auは「魔法のカメらんど」って。auが初めてカメラを出してたんですよ、あの写メの。うん。そのカメラをピッと撮ったやつをホームページとかいろんなのにつけていったりする、カメラランドって。だから、それってね、早かったですよ。うん。あの、ジグノシステム（：ジグノシステムジャパン株式会社）さんって上場していった飯田桂子さんっていう、あの女の社長の。写真を、写メを撮ったやつをプリントするとか。

――J-PHONEではなくてauなんですか。

谷井：えっと、それはauでやってました。ドコモがジグノシステムさんとやった。その頃DeNA（：株式会社ディー・エヌ・エー）さんがまだオークションサイトをやってて、やっとオークションサイトをauとやりだしたんですよね。それで魔法のiらんどと組んで何かやろうかっていう話もしてましたけど、あっちはその後、そのオークションサイトのDeNAじゃなくて、ゲームのですごく大きく。モバゲーだったり。みんなね、だからモバゲーさんも大きくなっていたし、あとGREE（：株式会社グリー）、田中（：田中良和）さんっていうのも大きくなってたし、facebookじゃなくて、facebookなんて影も形もなくて、mixiがありましたね。mixiだって影も形もなかったですからね。
うん。成毛さんが、マイクロソフトの成毛さんが、世界中でブログとか出てたから、ブログとか入れてこうやってこうすればいいのにってしょっちゅう言ってたのを、あんまり■■やらなくて。その子たちのために何ができるのかばかり（：考えてた）。そういう意味では、魔法のiらんどはちょっと異質な形での流れだと思います。

――ブログ的な、まあでも先ほどのあいぴで10人にとかって、ソーシャル性もね。ブログはやっぱりそこが特徴というか、個人サイトとは違う繋がりができるみたいな。

――ネーミングは最初から魔法のiらんど？

谷井：違うんですよ。最初は、このノートにあるように、愛っていう、この愛する愛に楽天の楽で、愛楽っていう名前だったんです。

――そういう時はまだ女性が必ずしも多いっていうイメージじゃなくて、誰が来るかわからなくて。

谷井：いや、あのね、それはもう企画段階で、手書きでこういう絵を描いて、こんな感じのサイトのホームページをこうしようという時が愛楽だったんです。だけどその、これを作ったホームページの最初のトップの画面を、PC上の画面に、娘が中学生になってた。娘に見せたんですよ。そうしたら、うわ、これ、もう、中学生の娘が拒絶反応、ピンク色でやめて、パパ、こんなの嫌だって。何がいいんだろうって、全員集めて、企画のメンバー数名くらいで、これはちょっとまずいと。もう、中学生の娘が拒絶反応をした。
そして、でも、ホームページで、そのまましばらく何も名前なくて、1999年12月14日に魔法のiらんどサービスをする、ちょっと前ですね。本当に1週間くらい前に集まって、そうしたら、ホームページが作れるし、自分のホームページを自由に作るって、夢みたいなものだし、魔法みたいなものだから、魔法ってつけたいねっていうのが、こんな感じの会議、どうすればいいでしょうか。うん。ブレスト会議もへったくれもなく。何も書かずに、魔法いいよねって言ったら、ああ、郡司さん（：郡司聡。インタビュー同席者。HARC顧問。）が魔法いいよねって言ったら、ああ、いいね、いいねって言われたら、魔法入れようと。
で「愛楽」って、愛する愛じゃなくて、iモードのiだし、インターネットのiだし、インターナショナルの世界にも通用するから、iにしようと。でも、i、可愛らしい小文字にしようよ。で、魔法のiらんどっていうのは、楽園に夢と感動を作って、その時にも子どもたちの夢と感動を作っていこうっていう、もう最初の構想があったんで。

――だから、最初から子どもたちっていうのはあったんですね。

谷井：あったんです。だから、iらんどでした。iらんどっていうのはディズニーランドの、ディズニーランドって安心するじゃないですか。自分の子どもの女の子が2人で遊びに行っても、そこで何かあることもないし、輩みたいな人もいないし。安心な場所だから、そういう安心なものとして、魔法のディズニーランドのランドにしたんです。

――なんで魔法が来たのかなっていうのをずっと考えていました。ハリーポッターのせいかなとか、いろいろ推測してたんですけど、関係ないんですね。

谷井：ハリーポッターは関係ない。でも惜しいですね。ディズニーランドですね。あいぴっていうのは、インターネットのIPなんですけど、iモードがiと、キャラクターはあいぴっていうキャラクターが、これがあいぴっていうキャラクターなんですけど、これが魔法のアイドルの宮殿で、あいぴってこういうキャラクターなんですよ。これが「ホームページができたよ」。そのあいぴっていうのは、うちの娘の呼び名を、レイナって言うんですけど、レイちゃんピーって、最後にレイピー、レイピーって、レイちゃんピーって付けてたんで、うちの娘の名前と同じあいぴでいいねって。

――のりピー的な。

谷井：そうです。結果的には、社員で、本当にあっという間で、魔法のiらんど。あとは本当、分析ですね。コンピュータ課（：？）じゃないけど、自分たちが何が欲しいのかっていうのを考えるんだけれど、やっぱり誰かが考えたものを作ってもしょうがないんで、できればそのいろんな人が書いてる言葉から発想しながら、こんなのがあると面白いわねって。でも大概できないんですけどね、難しくて。

――大量のテキストデータから欲しいキーワードで探してきて見るってことなんですか。どんなのがあったんですか。

谷井：こうやってトントントンと見てるだけでポンってやると書かれてる掲示板とかに流れてくるんですよ。画面上にそのデータベースだけでね。10秒くらいピッと見てて、またポンポンポンってやるとポンポンポンポンと流れてくるんですけど、そうすると同じものが表示されるんですよ。最初モンパチモンパチってなんだろうなと思ってたんですよ。モンゴル800っていう、そういうのがすごくヒットするっていうのも、世の中に全然出てないことが出てたりとか。だから、マーケティングの場所だったんですね。

――ツイッター的ですね。

谷井：そうですよね、ツイッター的ですね。

――ツイッターも、ボリュームじゃないところが面白いんですよね。

谷井：そうですよね。魔法のiらんども掲示板ですからね。掲示板をしょっちゅう見ていました。

――そういうところからアイデアで、新しく、すごい毎週イベントがある。そうなんです。

――すごいんですけど、これ、何人くらいで？

谷井：実はね、私一人なんですよ。ずっと。で、そこの、ネットワークを見てくれたのがナカノ。ナカノっていうのももう作ってくれたりして。で、トミタっていうのが着メロを作ってて。ここはね、もう、一人で全部、実は私が一人で作ってるんで、社長が一人で作ってるんですよ。誰がどんなこと言っても、俺が作ってんだよって。結構ね、いろんなところで、私が作ったとか書いてて、あれ、あんな人いたかなって。だから面白いもんですよね。「まほあい」とか、これはまほあいって言うんだよとか、あいぴとかって言う。言葉とかよく書いてる。誰がそんなの決めたんだろうって。まあこれだから、ここの期間はほぼ1年、私1人。開発はね。で、ただ、その結果100台ぐらいに増えていったりするので、そのネットワークを作ったり、やっぱりセキュリティはものすごかったです。当然こういうやつだからいじめられるんで、ボンボンボン入ってくるわけですよ。
ロードバランサーが分散してるんですけど、NTTデータネットワークセキュリティと組んで、外部のセキュリティは完璧にしてましたし、ファイアウォールの上にWAFっていうWebアプリケーションファイアウォールっていうのを作ってたり、もう本当に。裏側からしか絶対入れないようなネットワーク構成図を作ってましたけどね。そのためにやってたのがナカノとかそういう現場で、だんだんだんだん技術者を入れていったので、この1年くらいのほぼ最初の機能は私一人でした。なんでかって、人を入れたらお金かかる。その人たちは頑張って、違うところで頑張って稼いで、俺、地獄見るかなと。10年くらい会社やってると、どんどん増えてきて、NTTデータなんかの仕事とかいい仕事をもらうと、やっぱりすごい利益が出るんですよ。10年くらいかな、ちょうどやった頃に、家内に赤いコルベット買っていい？と。買ったわけですよ。この赤いコルベットで、よく会社に、やっぱり仕事好きだったんで、会社に泊まってるけど、このコルベット買ったらいつでも家まで帰ってこれるし、休みの日は二人乗りで、二人でどっかテニスとか行こうよって、買ってこれから乗ろうとかいう矢先に魔法のiらんどなんですよ。どんどん赤字になってく。で、コルベット買って、会社の駐車場にあるのに、乗って帰ることすらできないわけですよ。魔法のiらんどやってるので帰れない。自分が帰ったら止まっちゃうという錯覚でね。
で、もうサーバーが二台足りません。一週間入れて二台、三台しかありません。同じエンジンだし、アメリカのコルベットV8エンジンだから、わかったぞ、俺のコルベット下にあるから売れば、サーバー何台か買えるだろって言って、売ったんですよ。売ったら百何十万ぐらいしか。

――それまた安いですよね。

谷井：中古ね、四、五百万ぐらいのコルベットだったんですね。新車は八百万ぐらいなんですよ。五百万ぐらいのお金だったんです。もうすぐ（：現金が？）欲しかったから叩かれたんでしょうね、真っ赤なコルベット売って。百何十万、二十万ぐらいで売れたんで、サーバー2台買ってもらって、その代わり、ずーっとこれは、俺のコルベットので、社長のコルベットだって、ずーっとそのサーバーにね、書いといて。最後、何年も使うと、もうCPUや能力がダメになるじゃないですか。で、新しくなるときには、この札だけ返してくれました。社長のコルベットで買ったサーバー。

――で、その大手町のあそこに、それだけのことを貼ったものが納められたんですか。

谷井：そうそう、納めてくれました。コルベットは家内にも乗せて（：と言われたけど）1回か2回ぐらい乗せて、終わり。やっぱり過信したらダメだなと。結果的にそのコルベットのおかげで、V8エンジンでグイングインと、このグラフでグッと伸びたところがあるんです。コルベットが書いてないけど、このグラフでグッと伸びたところです。
そんな形で、2001年、2003年、2004年にきて、着メロができて大きくなっていく中で、ケータイ小説っていうのは、これで2000年3月10日に小説機能って出してるんですよ。2000年の3月なんです。2000年の3月で出てて、2006年に恋空が出てるんですけど、5年間もどんどんブレイクはしてるんですけど、パケット代が高くて、ケータイ小説を読んでるとパケ死するんですよ、みなさん。結果的には、この流れでは、ノードっていうかiモードがどのぐらいの比率で売れていくのかっていうものときれいに比例して伸びてくる。

――ユーザー数も比例して伸びたってことなんですか。

谷井：ユーザー数もそれに比例して伸びてくる。やっぱりパケット代が高すぎて、本当に遠藤さんと同じように10万とか、お父さんに買ってもらって、お父さんのところに10万円請求が来ちゃって、取り上げられたとか、そういうのが掲示板を見ると書いてあって、そこが一番トラフィックを上げるのは小説なんですね。小説はこうやって読んでいくじゃないですか。小説を書いている人も、いろんな人も読んでもらいたいから、しかも横書きですよね。横書きで、これこれこうあった、彼がこう来た、後ろからこう、彼が寄ってきた、てんてんてん、あれてんてんてんてんって並べるわけですよ。
で、そこでてんてんてんっていったら次へっていうこともあるわけですよ。そのページをめくると、トラフィック1個増えるし、パケット代がかかるわけですよね。だからそういう作りをしてくれるので、実はパケット代は…

――定額化するんですよね。

谷井：そうです。実は定額、固定のものが出てきて、一気にブレイク。それが2006年ぐらいだった。

――パケット定額2006年。もうちょっと前かもしれないけど。

谷井：もうちょっと後かもしれないけど。2006年あたりに「天使がくれたもの」っていうのがあったんですよ。で、泣いて電話がかかってたみたいで、出版会社さん。この小説を本にしてほしいと。で、それがスターツ出版（：スターツ出版株式会社）なんですけど、スターツのある方のところに電話があって。で、ケータイ小説なんて売れっこないと。無料で読めてるのになんで本にして売れるの。しかも縦書きじゃなくて横書きだから。

――しかももう行がめちゃめちゃ空いてるような。

谷井：めちゃくちゃ空いてるようなのを。で、「天使がくれたもの」を小説にしてほしいと。で、涙ながらに何回もあったから。その方が、専務が会いに来て。で、作りたいと。で、お話をして、じゃあ作ってみましょうかなと。だけど、8000冊作らないと日本の書店とかに届かない、だけど社長はそこのスターツ出版の社長は4000冊か何か3000冊ぐらいしか、だったらいいよって専務に言ったらしくて、菊地（：菊地修一）さんていう社長に。
で、じゃあ作りましょうって言って、その専務が実は社長に内緒で8000冊作っちゃった。そうしたらやっぱり8000冊がグワーッと売れて一気に10万とか20万とか売れちゃった。

――やっぱりパケ放題2008年ですね。だからその前はみんな気にしながら読んでたってことですね。

谷井：そうそう。そっから急に2008年。恋空が2007年、2008年、「赤い糸」はそうです。

――で、そのスターツの菊地さんとしては社長に内緒で企画する？

谷井：いや、菊地さん（：菊地修一）が社長なんですけど。もう一人専務がいて、その専務が私の方に来て。菊地さんっていう社長は元リクルートの人で、こんなの絶対売れるわけないから。だけど、その専務の人は、老獪なおじいちゃんみたいな人だったんですけど。

――勝手にやっちゃった？

谷井：いや、社長にちょっと騙してやるからって。大丈夫ですか？って。

――まあ、そういうのありますよ。

谷井：それで大ヒットして、もう菊地さんも、何か数か月前にも、スターツ出版ケータイ小説なんとかあって、こういうのを作ったって菊地さんが書いてますよね。あれ、大嘘ですよ。ある意味、これは可能性があったんだと書いている。会ったら言ってやろう、仲いいですからね、菊地さんと。その後恋空も出してくれたんで、天くれ（：天使がくれたもの？）と恋空も、恋空、上巻下巻で200万部売れてますから。

――すごい。

谷井：菊地さんもありがとう、ありがとうって。すごく仲が良くて。

――だけど、ちょっとその最初のエピソードが違うぞ、と。

谷井：見たら、全然違うこと書いてるじゃん。俺はもう静かにして、もう裏側に隠れてるから言わないけど言ってやるよ、みたいな。菊地さんはね、すごく楽しくて、熱帯魚が好きなんですよ。娘と奥さんに相手にされないから家に帰ったら、いつも熱帯魚を見てるんだ、谷井さん熱帯魚一緒にやろうよって。熱帯魚を買って、熱帯魚仲間でもあったんですよ。もうでも10年くらい会ってないんですけどね。そんなことないかな。今も社長として、スターツ出版の上場企業の社長として。

――「私の履歴書」もそんなもんでしょ。

谷井：最近もなんか書いてましたよ。スターツ出版のケータイ小説。当然、恋空っていう出版社としては合ってるので、あれが生まれたのは魔法のiらんどから生まれて、その天使がくれたものを出してくれた、その専務の。やっぱり出していただいたっていうのがあって、恋空を出してくれた。恋空はね、もう魔法のiらんどにガンガン電話がありましたね、もうそんなレベルが違うぐらいの電話があって、もうほんと出版してほしいと。で、美嘉ちゃんって実話なんですよ。美嘉ちゃんっていう女の子がちょっとだけ不良っぽい男の子と出会って、その子のことが大好きになってっていう物語で、結果的にその不良の子の元彼女にいじめられたりとか、元彼女が違う子に声をかけてレイプされたりとか、本当に悲惨な人生を送りながら、でも俺は守るってずっと三浦春馬が演じた彼が守ってくれてくるんですけど、守れなくて、大学があるときにこの子、小児ガンかなんかで男の子が死んじゃうんですよ。で、それもこのガンになってるのを内緒にしながら別れるって別れて。そういう彼のことがずっと好きですけど、でも私を守ってくれて、二人の子供が欲しいっていうので、ずっと思いを掲示板の魔法のiらんどの小説に、その彼のことをずっと忘れないで置いておきたいというので、誰かに見せるわけでもなく書いていただけなんですよ。
そうしたらそれを見た他の女子高生が、いや私もこれを見て感動して、本当に自分たちの生きる支えになる。美嘉ちゃんも書いてて、僕も辛くなって、彼が死ぬ時の物事とか全部が思い出して書いてるんですよ。仕草とかも、こんなのあって、ちょっとここであれここであれとか、それをやっぱり辛くて、また1ヶ月くらいやめちゃうんですよ。そうしたら読んでた女の子たちが、こう続けて書いて、最後まで書き続けたやつを、魔法のiらんど社の方に、これを本にしてほしいと。自分たちの宝物だと。携帯の中で全然全く同じですよ。読めてないわけではないんだけど。読めてるんだけど、いつか消えるかもしれないと。ちゃんとしたものにして自分は持ってたい。で、だいたい3冊買うんですよ。だから200万部売れてるんですけど。一つは自分がガンガン読むんですって。もう一つはいつまでも宝物として置いとくんですって。もう一つは大好きな友達にプレゼントする。だからたぶん200万部っていったって、その3分の1の読者数だったのかもしれないし。

――そういう声が、掲示板とかで、あるいは本人に（：寄せられていた？）。

谷井：ガンガンあって、我々のところにもユーザーさんから直接、電話っていうか、問い合わせにどんどん入ってきて。

――一番出版に踏み切ろうとしたきっかけは、本人の要望なんですか。それとも読者の声でしょうか？

谷井：読者の声ですね。本人は、実際自分たちが会いに行ったんですけど、もうやめてほしいと言っていました。そこに書いているのは、全部隠して名前を書いたりとかするけれど、実話だから、親族とか友達の名前もちょっと出ちゃっているから。美嘉というのは本名で、字を変えて美嘉なんですけど、だからああいうのも嫌だっていうことで言ったんです。でも、お話をして、ユーザーさんからこんなに要望が来ている、やってほしいということで、出版をしたんですけどね。そうしたら飛ぶように売れた。あれ、KADOKAWAさんにしておけばよかったですね。

――なんでこんなに売れているんでしょう。しかもすでに読めるのに、なんでみんな買うんですか？

谷井：実はそういうことなんです。読めて全部暗記できるぐらいになっている女子高生たちが、それを自分の宝物として本を買っているんですね。本当は100万も200万も、上下巻にする必要もないわけじゃないですか。やっぱり出版社としては2倍儲かるみたいな。スターツさんはそれより2倍儲かっている。自分の宝物として置いておきたい。自分の宝物じゃなくて、1冊はもうずっといつもカバンに入れて読みたい。もう1冊は好きな子にプレゼントしたい。結構ガンガン売れたのはそういうことだったんですけどね。
その後「赤い糸」というのが売れて。「恋空」を出版したのが2006年なんですね。2007年の頃にこれを映画化したいという話があって、TBSと東宝と魔法のiらんどでやった。2007年の11月、三浦春馬君と新垣結衣ちゃんにやっていただいて、新垣結衣ちゃんと三浦春馬君とも集まりましたけど、東宝映画なんですけど、東映撮影所で上石神井（：駅名だと石神井公園か大泉学園？）のところで撮って、あの辺に神社があるんですね。神社でこうやって三人でお祈りして、恋空のように、この今の空のように、真っ青なすごい良い天気だったんで、ヒットして売れるといいねって言ったら、映画館がすごいことになって。
東宝であの時に同時に「ALWAYS 三丁目」（：ALWAYS 三丁目の夕日）の2が出たんです。東宝的にはこんなケータイ小説も映画なんて売れるとは思っていないから、開ける館を少なくして、しかも同じ立川の映画館としても、第一ステージ、第二ステージ、第三ステージ、一番小さいステージに恋空で、ALWAYS 三丁目の2を一番人が入るところにしたんです。
そうしたところ、恋空はもう人が入れないくらい女子高生が殺到して、日本中。で、一週間後に「どうした？　これどうしたことだ？」って。で、ALWAYS 三丁目の2を少ない方にして、館数を恋空にグッと上げて、そして日本中もっと開けたんです。1週間単位で借りてるんですよね。だから映画、人が入ってもらえなかったらどんどん少なくされるっていうのは知ってたんだけど、そうした途端に一気にまた入れるわけじゃないですか。
怒涛のごとく来て、あの時の本当にナンバーワンの40億、興行収益300万人来て、あれグッズ商品化権かな、あの映画の中でウィリアム・ウェッジウッドとかああいうものとか、下敷きとか、ああいう指輪とか、商品化権だけで200億円ですからね。会長が知ったらめちゃくちゃ喜んだはずですからね。その時お会いしてないですからね。それはきっと、これカットね。
そんだけ恋空はすごくて、長く上映してたし、地方の映画館の人もすごい驚いてて、女子高生がとにかくこんな地方の田舎の四国とかのこんな古い映画館に集まってくると、それが何か同窓会が起きてると。高校生の女の子たちが集まって、「中学以来だね」って会話して、その後喫茶店で話をしたり、で、「またもう一回見ようね」とか、2回、3回くらい見てたんですよね。だから映画の興行収益も大きいんですけれど、あれも社会現象を起こしたのが恋空でしたね。
その後、ケータイ小説を携帯ドラマ化して、「teddy bear」で作ったりする。teddy bearが起用したのがセブンティーンの桐谷美玲ちゃん、賀来賢人、今多分桐谷美玲ちゃん会ってくれないかもしれないですけど、あの時まだセブンティーンの高校生で一緒に魔法のiらんどの「teddy bear」っていう作品。記者発表みたいなのも一緒にして、で、めちゃくちゃ優秀な演技をして。あれが桐谷美玲ちゃんの最初のあれだと思うんですけどね。そこからどんどん、すごいNHKとか出てますよね。
だから、魔法のiらんどのころは、新垣結衣ちゃんもケータイ小説の映画に出演するっていうのは、普通の人は絶対、やっぱり出ないですよ。レプロ（：株式会社レプロエンタテインメント）っていうプロダクションで、新垣結衣ちゃんはもう前の映画でもなかなかうまくいかないし、魔法のiらんどケータイ小説だったらいいかな。でもこれで失敗したらこの子終わりだねっていうので、こっち側に来たんですけどね。新垣結衣ちゃん、だから頑張ってほしいな。三浦春馬くんはアミューズ（：株式会社アミューズ）っていう会社の若者だったですけど。やっぱり若い子たちの女の子たちが裏側についていれば、多分何をやっても映画やっても何をやっても、やっぱりすごくヒットをするんだなというのは思いました。

――魔法のiらんどを見ている子たちというのは、横ではつながっていたんですか？

谷井：めちゃくちゃつながっています。

――それはそういう仕組みがあったんですか？つながりが。

谷井：つながるというのは？

――つまり連絡を取り合うとか。

谷井：連絡というのは、普通の魔法のiらんどのホームページの中に自分たちが全部ホームページを持っていて、個人個人が日記を書いたりそれぞれやっていて、そのようなことをしてつながっています。メッセージのやり方ですね。

――みんながページを持っているんでしょうか。

谷井：もうみんなが持っていました。女子高生はほぼみんなやっているんじゃないかなと。

――クラスの中でもつながっている。クラスの中でも評判でみんなが読んでいて。うちも娘がちょっと読んでて、うちにも恋空があって、色のカバーがいろいろ出てたところで、女子高生や電車の中でも、みんな読んでましたよね。

谷井：学校でも問題が。

――朝（：？）

谷井：そうですよね

――印象的だったのは、他社の出版物で成功しているのを見ている中で、地方と都会の売れ行きが変わらないということでした。普通は都市型で東京とか大阪とかで売れて、ちょっと時差を置いて広がっていくっていうのがベストセラーの売れ方なのに、いきなり地方でドカーンと売れてたので。

――その感覚みたいなものはありましたか。

谷井：ありました。地方の方がすごいなって、強力なパワーがありました。

――魔法のiらんどそのものが地方が強いって（：いうことですね）。

谷井：強かったです。トラフィックは、ユーザーさんは東京、関東が一番多いですけど、でも田舎の方の人たち、多分人口比率から考えたら関東より全然上だと思います。分析をしてて、多分どこかに地方のがあるか。

――いや、なんかデータを拝見したことがあって。

谷井：郵便番号か何かで登録を最初に。

――普通だと東京が突出してるんだけど、してなかったと思うんですよ。拝見したデータだと。

――ある意味ベストセラー作家の本の売れ方なんですよ。国民的な作家の本って全国満遍なく地方でも売れるんですけど、普通はデビューした当初は都市でしか売れないんですよ。だからいきなりそういう売れ方をしたのがすごく不思議でした。

谷井：それはまさに、もうすでに本が出る前に暗記できるくらいに読んでいたからです。本が出たらもうそれは並んで買うと。地方でも全部そうでした。

――すでに有名だったんですね。

谷井：もう有名でしたね。恋空も、赤い糸も、たくさん出ました。あの時に120万の小説があったんですよ、魔法のiらんどに。ブック機能っていうオブジェクト機能で120万の小説が登録されていて、誰もが小説を書いて、読んでもらいたくて投稿していました。読んでもらうと何か書いてくれる（：コメント）をじゃないですか。そういうのが好きで利用していました。
今はいろんな足跡機能とか、足跡を残してねとか、何番目のボタンを押すと100番目のスレになるとか、あれ全部魔法のiらんどが最初に作ってるんです。皆さんもfacebookとかにも全部入ってますけど、mixiにもそれはなかった。mixiの笠原（：笠原健治）さんがそれを思いついたのかもしれないですけど、魔法のiらんどはその前から最初の機能として作っていて楽しんでもらっていました。通りすがりの人がたまたまホームページに来て、100番目って仕掛けておくと100番目にたまたま来た人に、ポンと「あなた100番目です、おめでとう」みたいなのが出て「何か書いてね」っていう機能を作っていたんですよ。
それで2007年に恋空が出て映画が公開されて、その美嘉ちゃんにも本当に感動させられました。あんなに苦労して何回も自殺未遂やリストカットをしながらでも生きていく姿に。お父さんは会社が破産して、お姉ちゃんがいて、お父さんはその後ホテルのボイラーか何かで働きながら、でも離婚をしないように頑張っているお父さんの姿を見て。恋空の時にもお父さんにも何回か会いに行きましたし、居酒屋で食事もしました。
印税は美嘉ちゃん、そういうのはもう全然気にもしてないので、印税を全部寄付しようとするんですよ。魔法のiらんどに入る印税が2億とか3億ですよ。簡単に寄付しようとするから、魔法のiらんどの経理部隊が美嘉ちゃんの会社を作ってあげて、そこにちゃんと管理できるようにしてあげました。でもお父さんにはそんな高額ではないけど、マンション2000万円くらいのマンションを買ってあげたいって言って買ってあげて、自分は全然お金を使ってなくて、服もカバンも魔法のiらんどの女の子たち、我々がプレゼントした、そんな高くないカバンを大切に使っていました。お姉ちゃんも結婚して、もう普通の生活でした。普通にそんなお金が入ってもアパートにずっと住んでる。その後もずっとアパートに住んでるから。
美嘉ちゃんが本物か偽物か、美嘉ちゃんはどこの生まれで、どこにいるんだっていう、やっぱり記者さんとかいっぱい来るわけですよ。危険なので、我々の社員が何人かついて、その周りで、映画が公開される時とかはずっと守ってたんですけど、もうもっといいマンションに住んでほしいのに（笑）、危なくてしょうがないところに住んでる。だからやっぱりお金には関心がないんだなって思いました。
だから本当の作家ではないので、実話作品なので第二、第三作品ってなかなか出ないんですよね。本当の作家じゃなくて、自分の体験を書いただけなので。ケータイ小説ってそういう人たちが多いので、二作目、三作目が出るのは、そのファンの人はやっぱりまた書いてくれたと読んでくれるけど、全然違う内容を書きようがないので、サイドストーリーとかは書いてましたけどね。
その後ですね、KADOKAWAさんとの出会いがあって、映画もあり小説もありと、システム系の会社じゃなくなってきて。このままいくと、株式上場するかしないと、魔法のiらんどだけじゃちょっとうまくいかないだろうなって思いました。まだ60%以上、私は株を持ってたので。野村証券（：野村證券株式会社）が主幹事で、三菱商事（：三菱商事株式会社）、NTTデータも実は株を入れてくれてたんですね、途中から。NTTデータが株を入れてくれてたんですよ、魔法のiらんどに。
それで、9億近くまで自分のお金を全部つぎ込んで、資本金が4億、準備金含めて8億、9億くらいになりました。ドワンゴの川上さんも、あの小林（：小林宏）さんっていうのが社長だった時に、もう何億か入れてくれて、一番多く入れてくれたかな。それで、上場を目指して野村証券主幹事でやっていました。世の中の情勢が良い時と悪い時があって、いい時に上場すると資金調達がしやすいんだけど、そのタイミングを見てる時にKADOKAWAさんとの出会いがありました。
魔法のiらんど文庫、その文庫本をするのは、一応全部KADOKAWAさんにお願いしようということになりました。実は魔法のiらんど文庫っていうのは、KADOKAWAさんがずっと出してくれてたんです（：実際は2007年に角川グループ内の株式会社メディアワークスと業務提携し、魔法のiらんど文庫もメディアワークスから刊行　※同社は2013年にKADOKAWAグループに吸収合併）。映画もアスミック・エース（：アスミック・エース株式会社）さんとか、KADOKAWAさんの関係のところが作ってくれたりして、すごく強い関係がありました。
KADOKAWAさんとはずっとその頃から、やっぱり巨大な映画も小説も作れる出版会社だなと思っていたので、上場をしないでKADOKAWAの佐藤（：佐藤辰男）さんにお話をして、魔法のiらんどをKADOKAWAに売却しました。技術系の方はNTTデータに売却したんです。最初に作ったティー・オー・エスというのは、NTTデータクイックというのと合併して、NTTデータビジネスシステムズ（：株式会社NTTデータビジネスシステムズ）という1000人くらいの会社になっています。
あれも私が最初に作った会社なんですけど、その売却したお金も全部魔法のiらんどに入れて、上場を目指そうとしたんですけど、最終的にはKADOKAWAさんに売却しました。子会社ですよね。そんな感じです。
1989年からiらんどが生まれたのが1990年。1999年から、その10年と1999年からもう25年経ってますよね。多分、まだまだいっぱい■■（：聞き取れない）があるんでしょうね。
まあ分析ですね。データベース分析で、どういう人がいて、どこでどんなことをやるといいんだろうということを考えながら、うまくiモードというものがどんどん普及していった時期に乗っかっていって、それに比例して大きくなっていきました。かつ、競合他社がいたのを技術でかぶせて（：差別化して）いったり、競合他社の数字と同じところはいつも調べてて、どこで抜いてやろうっていうのは数字でずっと追っていたんですけど、一気に抜いていくと、もう1位しかありえないですよね。2位、3位はもうない状況でした。あの時代、ITが伸びていく時代で、そこで魔法のiらんどが一番に躍り出て。

――なるほど。大変有意義な感じで伺えたと思いますけど。

谷井：取り留めのない話になりました。

――女子高生がなぜそこまで、時々何か突然、別に媒体に限らず、ブームがワッと来て、わりとしばらくするとこう下げちゃう（：下火になる）みたいこともありますけど、それだけこう求心力、パフォーマンスを持った一番の肝は何だったと思いますか。

谷井：女子高生の頂点というか、ギャルサーというのが実はあって、青山にガングロというのが渋谷系で流行りましたね。ギャルサークルという、ギャルのサークルの頂点が渋谷にあるんですけど、その女の子がまず自分たちのホームページを携帯で簡単に作れるので、それを作ったのが魔法のiらんどですね。それも見つけたので、ギャルサーって何だろうなって、当然わからないじゃないですか。で、自分と社員と、捕まっちゃいけないので、原宿によく行きました。会社の社員で原宿に行って、喫茶店に行って。女の子たちの声をずっと聞いてようよって。そうしてギャルサーというのがこういうことなんだと理解して、そのギャルサーの頂点の女の子に会いに行った。

――あ、頂点の人がいる。

谷井：100人くらいいる。で、しほちゃん（：藤田志穂）って子だったかな。しほちゃんのところに行って、しほちゃんも持ってて、ギャルサーの女の子たちが100人いたら、もう98人が魔法のiらんどを使っていた。2人だけ違う会社だったんですよね。もうそれで100%になってしまって、しほちゃんと一緒に話をしたりして、青山に行ったり、そういうリアルな活動もしました。あとは、魔法のiらんどで、今はできないんですけど、お父さんお母さんの許可がないと。原宿の魔法のiらんどの高校生で、近くの町に魔法のiらんどに来て、会議室でお菓子を食べるようになって、夕方呼んで魔法のiらんどの会議室で、どんな機能があったらいいとか。

――モニター会議ですね。

谷井：みんなでいろいろ意見を出し合うじゃないですか、どんな機能がいいんだろう、わからないとか。分からないってやってるじゃんって（：言われるけど、）いや、でも分からないもん。そういうのをやっているのも、感性が身についたのかな、うちの社員に。その後企画のメンバーに。

――やっぱり企画に活かされたんですか？ お菓子会は。

谷井：いや、活かされたとは思えないんですけど、自分も何回か出ましたけど。でもその中から、その子たちの意見を聞いても全く無理だなっていうのは分かって。でも自分たちが毎日、原宿、裏原とか行って、あ、ゴスロリっていうのはこういうのが流行ってるんだなと。そんなの、技術系の会社なんで分からないんですよ、社員には。行ってそういうのを、毎日、毎週やってたことから、多分生まれてると思いますね。こういう人が嫌いとか、ああいう人が好きとか、こういう服がいいとか、こんなのが売れるとか、毎夏何色になるとか。

――女子高生の軽いファシズムみたいなのありますよね。どの時代にもね。ポケベルの時代もそうだし。

谷井：そうなると、ギャルサーの100人が、青山とか渋谷の頂点のファッションをリードする子たちが、109とかをもう牛耳っている子たちが、魔法のiらんどだったら、当然その配下にいる地方の女の子、関東近辺からこっちに来る子から、修学旅行で来る子から、もうみんな憧れになっちゃうので、魔法のiらんどっていうブランドが確立するんですよね。魔法のiらんどの綺麗な感じ。

――雑誌と絡みはないんですね。

谷井：ものすごくありました。

――それってだって雑誌で女子のああいうものは。

谷井：雑誌が勝手に取り上げてくれる。

――原宿を動かしてるのは神保町みたいな、ものすごく変な構造があったと思うんだけど、雑誌絡んでるはずですからね。

谷井：めっちゃ絡んでる。

――新潮が出してましたね、小悪魔とかなんとか（：『小悪魔ageha』のこと？　しかし版元は新潮社ではない））

谷井：あれのホームページが全部魔法のiらんどですよ、最初に出したけど。こういうトレンド、こういうしほちゃんのこれがこうあって、こういう見てって、下に書いてあるURLが全部ip.ティー・オー・エスpeed.co.jp、魔法のiらんどのホームページなんでね、それを見ればみんな入ってるんじゃないかと。そうすると、こっちのホームページ見てると、あれ？これ「自分も作ろう」ってボタンを押して、簡単に作れるんで。

――新潮、確かにあの辺意外。「nicola」の上を。

――「Popteen」は違う。

――Popteenはまた、あなたはまた。Popteenは暴走族取材してるから、そういう。

谷井：結構そうだよね、雑誌との連動を。魔法のiらんど＝雑誌みたいなもんじゃないですか。

――まあそうですけどね、こっちからも双方向性を持ったみたいな。まあでも方向も強いか、もともとiモードもね。

谷井：そうですね。小説書いた人に対しては必ず頑張ってねとか、その先見たいとか、ありがとうとか、勇気もらったよとか書いてあるコメントがいっぱいありますよね。双方向で、私も書いたから来てねっていうのが書いてあって、そこに行くとその子も小説書いていって、お互いが面白いねと。一緒に小説書こうかとか。そういうのを取り上げているのが雑誌ですね。

――そうですよね。

谷井：多分すごい売れたと思いますよ。半分以上、iモードとかそういう雑誌ばっかりでしたね。こんなホームページがある、こんなのがあるっていう。iモードのホームページの作り方とか。魔法のiらんどの作り方の本もいっぱい出てましたね。どうやってホームページを作るとか、日記を書くんだとか。作り方の本も売れてましたね
自分たちが思うのは、ターゲットをきれいに集めるということをやって、それだけに絞って作っちゃった。全員やっていると作れなかったと思います。それとなるべく、毎日のように声を、データベースを舐めて、日本全国に書いている掲示板の声とか日記とかを全部一同に、一個一つのものではなくて、書き込まれているデータベースは、日本中の人たちの掲示板が入っている。それをID、ホームページによって切り分けて自動に生成して各所の掲示板に出しているだけなので、データベースは一本みたいなもの。それをだーっとテンテンテンと見て。何人かで見てましたけど、ここからヒントがあるんじゃないかと。それをヒントにして選んだものを作ってみて、ダメだったら別に使われないだけなんで。とにかくすぐ作って出して、すぐ作って出して、結構使われなくて死んでるやつ（：機能）もいっぱいありましたけど。

――作ってるっていうのが、HTMLで書かれてるんですか。

――いや、プログラムを作ってるんです。データベースから読み出した新しいサービス。

谷井：いろんなデータベース、いろいろ書き込みとかしてるやつを、リクエストがiモードのある人の。で、私の手元をポンと叩いたら、その時点でどういうリクエストかっていうのがうちのデータベース上に入ってきて、その時点で、これはドコモのこの機種のこのタイプのこのブラウザーは2.0を認識しているやつだって分かったら、その判断でHTMLを自動的に生成していくんです。

――動的サイト。

谷井：だからHTMLは全く影も形もないのね。「これはドコモだから、ドコモのこのタイプだから、しかも白黒だから白黒のタイプのこの横でこうね」というのをHTMLを一瞬のうちに生成してドコモに送り返すと、ドコモで見れるし、PC上だったら、これはPCパソコンから来てるんだったらパソコンのHTMLは結構能力があるので出してやったりとか、そういうのが。

――それにさらに修正という感じ？

谷井：そこにその子たちがこうやって。また日記とか、小説を書こうとしたら、この格好のとこで小説の書いた内容をピッと書いたら。表示してるのはもう入ってるけど、中身の書いてるのはピッと書いた時点で、それがデータベースのこの子の、この何ページ目のここですよってピコッとデータベースに入るので。次にバッと押したら、そのページとかをまた自動生成して表示してる。

――で、それを谷井さんの方で修正というか、新しい機能をつけていってたのは、HTMLで書かれてたんですか。

谷井：いや、新しい機能はプログラミングして、最終的にHTMLを生成するんですけど。例えばこんな感じで、画面がこんな感じでこう推移してこうかなっていうので、こんな感じで動くんだったら、その中をデータベースがどうなって、どう動いてっていうのをプログラミングをして、こういう感じで画面が動くと、このエリアが、これがデータベースのエリアがこうで、こういうのは全部自動的に生成しているので、HTMLが影も形もない。分かりづらいかもしれない。

――これは誰が書く？

谷井：私が全部。最初の頃は、これも結構増えているんですけど、こんな感じの。ここからバックボーンがあって、ここにルーターがあって、ハブがあって、これがロードバランサーで。これがウェブサーバーがずっとあって、この下にデータベースサーバーがあって、これがどういうデータベースがここに格納されていて、ここのウェブサーバーで自動的にHTMLを生成しているんです。またこっち側もバックボーンに。

――その設計も全部（：谷井さんが）？

谷井：そう、これを書きながら、手書きで書いて裏側来てて、絶対に裏側のNTTデータのこっち側からしか入ってこれない、社員も入ってこないルートから開発のプログラムを入れないと、こっちから入られたらすぐ壊されちゃうので。こっち側と、この番号のIPアドレス、203.182.10.49.26というIPアドレスを1個ずつ割り付けて、だけどこういったサーバーがトラフィックが増えてくると、ちょっと先ぐらい、これ手書きで書いてるときは、全部こんな機能があるねとか話をしながら、これがデータベースの中にあるやつですけど、これを増やそうとか、これが一個ずつのデータベース。こうやって書いてると、ここはちょっとだけ増えてきたな、どんどんどんどん増えてきて。考えてこういうのが増えていくと、またこれがデータベースのエリアなんですけど、1ビットごとに作り込んで、そうすると、まだこうやって、どんどんどんどん増えてくるわけです。たぶん、終わりの方だと、どんどん天文学的に、これ、直したばっかりに、まだこれ作ってて、ワープロでできる。

――なんで手書きで？

谷井：なんか、ワープロもなかったな。ワープロあったのかな。エクセルもあったけど、手書きで書いた方が、楽だった。

――フローチャートで書いてた頃。

――案外、そんなもんですよ。

谷井：だから、こんな感じで、思いついた、これは何機能、なんとか機能、なんとか機能っていうのを。

――先ほどの、どんどんどんどん、新しい機能を提供して、提供しないと、また、下がってきて、みたいな。不思議なのは、ヒット企画があれば、そのヒット企画だけで、こういくはずなのに、カンフル剤的に、ピンクレディじゃないけど、どんどん新曲のタイミングを上げていくくらいじゃないとダメだったみたいな話あるじゃないですか。ユーザーにとっては、自分が好きな機能だけ使っていればいいんだから、新機能は来ようが来ないであろうが、下がったりしないような気もするんですけど、何なんですかこれは。

谷井：えっとね、日記だけでやってて、当然日記の機能の中に、何も使わなかったら、そうですね、減っていってたんですよ。

――何なんですかね。ココイチ（：カレーハウスCoCo壱番屋）のキャンペーン商品みたいな感じですけど、あれいらないのにやってるじゃないですか。毎月のように、なんとかフェアとか。

谷井：確かに日記を書いた人が、他の人に「見てみて私の日記」、みたいなのを送って。その人がその日記を見たら、あれ、自分も簡単にできるんだって気づいて、また作り始めて日記をやっていけば。

――それは健全。

谷井：循環で動きました。新機能はね、日記を書いて普通に健全的に動いていくのもあるんですけど、なんか止まっているように見えたみたいなんですよ。

――新機能があった方がいい？

谷井：新機能がないと。

――こういうのがあったらいいなを、どんどん出している。

谷井：こういうのがあったらいいねというのをどんどん出して、それでユーザーさんも日記だけの傾きじゃないトラフィックになっちゃったんじゃないですか。

――本当ですか？

谷井：これ結構検証していて、何もやらないと本当にね、じわじわ下がってくるんですよ。飽きっぽいのかもしれないですけど。

――八百屋や魚屋みたいなもので、新入荷がないと。

――多分ユーザーさんも、自分がお願いしたことができるから、自分がそれを作ったものみたいな感覚になっている？

谷井：まさにその言葉があって、自分たちの、これよりもうちょっと後の時代ですけど、何人かでずっとデータベースを見てて、「こんな機能があるといいよね」と。やまびこ機能って言うんですけど、掲示板で誰かが書いて、そこに「誰だね」ってやったら、自動的にメールが飛んでいって、「おーい」って呼んでる機能が欲しい。「こんなのあるといいよね」っていうのが書いてあったんですよ。「これすごいね、こんな機能あったらいいよね」って言って、その連中が会話を、まだ掲示板でやって騒いでる間に、作ってリリースしちゃおうぜって言って、ポンとすぐリリースしちゃうんですよ。
まあ2時間かかるので。そうしたらその掲示板のところで、「え、すげえ」って、我々も読まれてるかのように、「俺たちすげえな」って書いてあって、まさに読んでましたみたいな。言わないんですけど。そうすると、「俺たちと同じことをここの会社考えてるんだ」とか。

――インタラクティブ性みたいなことを（：音声が遠く聞き取れない）

――クレーム言っても返ってこない、某なんとかブックとはだいぶ違う

谷井：確かに小説の機能が最初の頃ですね、この1年ぐらいでグワッとカンカンカンと伸びていって、そこから先は、もうブック機能に何かしら何かをするって言っても、そんなにはあんまり影響しないですね。ブックはブックでどんどん増えてくるので、優秀な、『恋空』の美嘉ちゃんのような作品があれば、これはもう自然にそこそこみんな集まってくるので増えてくるんですけど、機能的にはもうこれが限界だったんじゃないかなと。最初の伸びていく間、日記機能だけしかないとか、なんとか機能しかない。魔法のiらんどは、何かしら毎週来てしばらくほったらかしにして、来るとまた新しく何か変化してるっていう、そういうのが、最初の引っ張ってるところではあったのかもしれない。言葉も、1か月ぶりに来たら、「なんかすげえ変わってるなぁ」とかね。「なんか、面白そうだな」って書いてあると、「なんか、あ、嬉しいな」って思ったら、追加してる。

――何なんですかね、レストランなんですかね、何なんですかね、サイトそのものが。

――同じもの出していたら、来なくなりますからね。

谷井：なんか止まってる様に見えるみたいですよね。だから、コンピューターで、「今日の日は晴れ」とか、自動的に出すようにしたり、この日に特徴のあるような、夜中でトップページ書いてみたり、そういうのを作ったり。で、しかも人間の手で、「紅白歌合戦で何歌ってる？」っていうのをトップページにバンバンバンバン出して。正月前も会社に泊まってみんなでやってた時があって。「魔法のiらんど、なんか自動的に出てるな」とか書いてあって（笑）。ラルクが何歌ってるとか知らないんだけど。そういうタイミングで増えてくるんですよ。

――その着メロ、色メロとか、高𣘺ピョン太（：高橋義信の通称）とかの世界なんだけど。御社も着メロをやって、そのモデルでも着メロってある種飽和してくるじゃないですか。スマホとか着メロに対してみんなやってないじゃないですか。その後の経緯、そのアフターアワーズ的なその後の話をちょっと伺って終われればいいんじゃないですか。

谷井：着メロはやっぱり最初にやって、そんだけの会員が増えても、やっぱり着メロってJOYSOUNDさんとか大手がたくさんやってるので、魔法のiらんどのユーザーさんに当たるのは、限界でやっぱり33万。最初にバーンと入ったら、もうそこから大きくは増えないです。でも減りもしないので、着メロで入ってくれた人が2年3年くらいは利益をずっと生んでくれる。最後は、どんどんどんどん消えていって、かついろメロミックスさんがやっていったように、今度はどんどん、彼らは着ボイスとかいろんなことをやって、ゆうこりん（：小倉優子のニックネーム）の着ボイスとか声が、電話鳴ると、「電話鳴ってるよ、こりん星から来たよ」って、企画をどんどんやる能力は、もうドワンゴさんは最強で、我々はそういうのなかなかできないし。で、着メロはいつか間違いなく終息する。でも5年くらい動いたから。で、最後は、これが終わってきた頃に、今度は映画が。『恋空』っていうケータイ小説が一気にブレイクしたんで。ケータイ小説の時代で、突き進んでいきましたけど。着メロはその頃はもうなかった。KADOKAWAさんに売却した時は、もう着メロは終わってた。

――いやいや、全然いいですよ。全く大丈夫です。

――予想もしなかった、見解が。

――まあ、コルベットとかかな、一番いいのは

谷井：社員知ってますよ。

――最初に、ティー・オー・エスが設立されたその前という、学生時代にプログラミングを？

谷井：どこまで出せるかわかんないですけど大丈夫です。私は三重県生まれなんですよ。300年以上続いている旧家で生まれてて。裏も谷井、周りも谷井の。長男で大学で東京に来たんですけど、あまり勉強もせず、三重県の津高校って東大とかたくさん優秀な中の高校だったんですけど、法政大学に入った。
そして、家内と、2つ下の高校生の家内と大学1年の時に出会って、大学3年生に子供ができたんですね。大学3年生で子供ができて、まあ、家内は高校卒業してからなんですけどね。で、そうしたところ、田舎にアパートを借りてくれてるわけですね。父親が三重県からわざわざ東京で勉強するならとアパートを出してた。それなのに、大学3年生で子供ができるっていうか、とんでもないやつなわけですよね。逆の立場なら「何に勉強しに来てるんだ」って思いたくなりますよね。それで仕送り全部止まったんですよ。

――それが小説じゃないですか、十分

谷井：それでもう二人とも食っていくことができないから。そうしたら、たまたま親父が運悪く、車を、スカイラインを、私が東京にいるために買って持たせてくれていたんですよ。ボロボロのスカイラインですけどね。それが駐車場に置いてあって、アパートの仕送りが止まっても車があるので、じゃあ二人で車で生活しようかと。最後にちょっとした1万円か2万円かを持って、三重県とは反対の方に、吉祥寺のところから松戸のところまで車で行って、松戸の河川敷に車を停めて、黒く塗るスプレーがあったので、スプレーというかスモークですね。あれで中を、運転席はそのままですけど、塗って。アパートから布団と何かを持ってきて、車の中で2週間生活するんですよ。
だけど、あの時は本当はもう死ぬつもりで、もし子供が生まれたら3人で死のうと思って、車で家とは反対の方向に行って、たまたまもう最後のガソリンが危ないということで、松戸の河川敷だったんですけど。河川敷で家内と一緒に死のうねって、エンジンをかけてブンブンふかして、家内とまた出会ったらいいだけどと、運転していくんですけど、橋の欄干にぶつかって死のうとするんですけど、やっぱり怖くて、ギリギリになったらハンドルを切るんですよ。そうしたら、すごい力でハンドルを戻す家内がいて、もうちょっとで死にそうになって。急ブレーキで止まって生きているんですけど。だからそんな感じで、なかなか死ねなくて。
私はブレーキを踏む、家内は本当に死ぬつもりで、ぶつかっていこうとする。一生懸命体で戻そうとする家内と戦いながらブレーキを踏んで、助かったとか。それで今の家内もそうなんですけど。それで2週間そこにいて、何回も（：死のうとしても）死ねなくて、河川敷に車を置いて、1週間ぐらいでこのまま本当にお金がなくなっていくのがまずいから。
河川敷から歩いていくとイトーヨーカドーかなんかがあったんですよ。そこでコカ・コーラを1リットルと、食パンがお腹いっぱいになるので、それを2つ買って、水がなくなったらまたイトーヨーカドーで水を入れて。家内と2人でどうしよう、どうしようと。アルバイトも住所不定だからできないし、このまま仕送りもないし、銀行に入金もないし、まずいなって。トイレもあったんですよ。ちょうどトイレがあって、よくそんな水とかを飲んでいるから家内がお腹を壊して、トイレが怖いから見てって、公園のトイレで。
二人で多分、松戸のところにいたら、柏に朝8時ぐらいに行くと、大日本ポリマー（：現・株式会社DNPテクノポリマー？）というところがあって、そこに行くとその工場にバスが来て、8時に乗せられると、1日の日払いで、まだ覚えているんですけど、5432円というお金がもらえるということを知って。じゃあ明日行こうと。車のところから松戸から柏まで歩いて、明日早く。家内を置いてね。私一人で行ったらちゃんとバスが来て、バスに乗せられて、ちょっとした面接みたいなことをして、じゃあ来てくれと。
その日の夕方、5432円の現金をもらったんですよ。それを持って家内が待つ車まで一目散に帰って、二人でこれで生きていけるよと。その後、毎日行って、家内も何回かじゃあ一緒に行くって言って。2週間ぐらいで現金が貯まるので、松戸の五香というところに安いアパート、1万4000円くらいのアパート。「ジュンハイツ」まだ覚えているんですけど、家内がよく覚えているねって。
松戸の駅からえらい歩いて40分のところにすごいアパートがあって、（：トイレが？）ボッチャンって落ちるような。今時こんなのがあるのかみたいな。1万4000円だったんですけど。それを不動産屋さんでちゃんとやって、保証人に嘘を書いて、ハンコも買って一応住みました。そこから一つ一つ、アパートから何か仕事はないかなって、やっと2週間後にアパートに住めて、そこからいろんな仕事のところに行って。
朝4時くらいとかも、小伝場町まで行くのには松戸まで歩いて、そうすると松戸から五香までの電車賃は、電車賃がもらえるんですよ。だから自分があたかも電車で行ったことにして、出金伝票で現金をもらって家に帰ってきて、1日500円の生活をしながら子供が生まれて、今の長男ですね、生まれてくるのをそこのアパートで育てて、1日500円の生活をして、長男がそこで生まれて。
その仕事は、やっぱり技術系の仕事をなるべく探してやっていたんですけどね。長男が生まれてアパートが、やっと三鷹の方にまた引っ越してきたんですけど、500円の生活で、これはめちゃくちゃいい話なんですけど、これは忘れないぐらいの話です。500円も一生懸命貯めてくれるわけですよ、子供のために。でも、ある時500円が貯まって、もう使ってもいいと、2人で500円、好きなものを買おう！ということで、セブンイレブンに行って、250円ずつ分けて、家内はチリトマトヌードルをお湯を入れてもらって買って、私はセブンスターを買った、お金がないのにタバコを買ったわけですよ。セブンスターを買って、マッチをもらって、タバコを吸っていたんですよ。
そうしたら、うるさいんですよ、お腹の足しにもならない、せっかく分けるのに、チリトマトヌードルがおいしいよとか言うのが。タバコを吸ってクラクラしたら、ポンポンと叩くから、また言うのかなと思ったら、食べていいよって。半分、きれいに半分をくれたんですよ。あのチリトマトヌードル、めちゃくちゃうまかったです。
だから、どんなおいしいものを食べても、フレンチを食べても、家内にもらった250円で、俺は煙にしちゃったとんでもない男なんですけど、もらったあれがおいしくて。まあ、そういう、なんかすごい、楽しい思い出もあって。仕事は本当、朝4時からガンガン働いて、働いて。
そうしたある時、東芝情報機器（：東芝情報機器株式会社。現・Dynabook株式会社）の取締役会（：？）というか、それを管理するところの社長と知り合って、そこの会社でやらない？って言われて。情報処理の国家資格をとにかく取ろうと、それを徹夜徹夜で3ヶ月で取ったのがまた大きなきっかけで。東芝のそこの社長が、若いけどやる気があるから俺を育ててあげると言ってくれて、それで東芝情報機器の子会社の外会社、東芝の機械を扱っているところを若くして、本当に最年少の役員にしていただいたんですよ。25～26歳、技術系の。それでNTTがまだデータ本部、まだNTTデータができていない当時、東芝の機械で勉強して教わり、その社長からの取締役会議とかに出ていて。取締役会議とか、株主総会ってこんな、こんないい加減なの？これ、俺でもできるなと思って、その社長に「すみません。26歳になって、子供が大きくなって本当に苦労したんです。子供たちにもっともっとおいしいものを食わせたいし、自分ももっといい生活したいし、会社を作っていいですか？辞めていいですか？」って言ったら、「ふざけるな」って、えらい怒られた。何回もその社長から車を運転しながら「お前のことを考えて、俺ももうちょっと事故しそうで、死にそうだった」とか言われたんですけど、1年ぐらい経って「分かった、もう作っていいよ」って作ったのがこのティー・オー・エスという会社なんですよ。
だけど、ちょうど半年ぐらい経ってからかな、その今一緒にいるエヌ・ティー・エス（：株式会社エヌ・ティー・エス）という会社のナカノっていう、その当時新人で入ってきた男が、3～4年ぐらい経って落ち着いて、もっとかな、5年ぐらいかな。初めて、娘もいたから、もっと経っているのか、10年、8年ぐらいの時に、結婚式を社長、やった方がいいと。奥さんと。親族にも三重県に帰れないんで、もう逃げてきた状態なわけですよ。うちの家内、東京の悪い女に捕まったみたいな世界だから、三重県に帰れないんで、三重県の一族をみんな東京に呼んで結婚式をしてあげましょう、というのが8年後にあって、その時は娘も写っていたので、娘が生まれて3歳、4歳。全社員が一生懸命準備してくれて、おじいちゃん、おばあちゃんとかも全部東京に呼んで。初めて結婚式ができて、うちの家内も晴れて三重県に帰れる。今、うちの長男が三重県の家を継いでくれて、夫婦で私は東京にいて安泰なんです。
そんなことがあって、平成元年に会社を作ったきっかけは、これあんまり堂々と言えることじゃないんですけど、本当は自分がお金を稼ぎたかった。家族、娘のためにとことんお金を稼いで持っていってやろうと。そのためだったら、会社を作った方が絶対早い。というので、あんまり世の中のためを考えていないんですよ、26歳って。実は汚い話なんです。会社を作る。それが途中から社員とかがいっぱいついてくると、その人たちのためとか。やっぱり会社で利益を上げるためには、相手のことを考えたり、お客様のことを考えて、その人たちが喜ぶことをやらないと、絶対にお金って、会社って利益が出ないねっていうのを経営をやっていて分かったから、今はそうやって言えるんですけど。作った時は自分のため、家族のため。それはちょっとオフレコかもしれない（笑）。大学生に言えるのかな？

――いやいや、全然いい話だと思いますよ。

――徹頭徹尾自分のためって思ってる人も多いから。

谷井：まあ、そんな感じで、実は。

――すごい、めちゃめちゃ小説じゃないですか、恋空以上。

――全部繋がってることが。

谷井：そうですね。そんな感じで。

――ずっとやられてた時も、恋空の話の時にしても、すごく人と繋がって、人と話をしてる。おばあさまがいらっしゃって、魔法のiらんどを無料って止めなかったっていう時も、魔法のiらんどとかケータイ小説っていうと、すごくちょっと、人との繋がりがこの画面越しとか、インターフェース越しになりそうなところなんだけども、実は人と繋がって。

谷井：そうなんですよね。人と繋がるための道具であって。ITは最強の心温まるものじゃないといけないなと思って。それとおばあさんが来た時にも思い切ってやろうとした時には、ここらへんにはこのまま行ったら倒産するぐらいのお金になるだろうなっていうのもあったんですけど、もうでも、いざとなったら一回きりの人生だし、死んじゃえばいいやぐらいの覚悟ですね。もう飛び降りてる感じですよ。
それが偶然うまく行っただけなんですけどね。多分、川上さんはよく知ってると思いますよ、私のこと。そういうところの。若い頃のiらんどができた頃とかは知ってると思いますけどね。ニコニコ動画を作った時にも、最初にこんなの作ろうと思ってるんだけど、YouTubeじゃなくて日本語であれでこうやって文字入れてて、最初に見せてくれましたね。ここじゃなくて、明治座のところにあったところで、こんなのを考えてるんだけどって。だから知ってると思います。

――なるほど。分かりました。奥村さん（：奥村良磨、インタビュー同席者、HARC事務局）何かないですか？感動の、過去このシリーズで最も感動じゃないですか。

谷井：そんなことない。会ってるじゃないですか、KADOKAWAの時に遠藤さんと同じ部屋で寝てましたもんね。

――じゃあ学生に向けて、大学とか高校でこれ学んだ方がいい、こういう体験した方がいいみたいなものが、もしあれば教えていただきたいなと。

谷井：自分が今までやってきた中で思うのは、その時はめちゃくちゃきつかった。おばあさんの時もそうだし。なんかすごいきつい時がものすごくあるんですよ。でもそれを乗り越えたら、その先に、あ、あのキツさがあったから、今これがあるんだってわかるときがあるんですね。おばあさんの話のときに、アダルト広告というか、広告を庶民金融から取っていたとしたら、間違いなくそのときは良かったかもしれないけれど、あれを超えたからこんなに恋空っていう映画で発展したんだなというときがふっと出てくるので。
たぶん学生の方に言えるとしたら、えらい大変な苦しいときも必ず乗り越えられるだろうなと。社員にも言っているんですけど。誰でも、皆さんが言っていることかもしれないけど、乗り越えられないものは、そういう試練は神様は作らないと思いながらやっていれば、必ず。そのときにならないと見えてこないんですけどね。見えてきたので、自分は。そういう信念でポリシーを持って、自分の思う道を進んでいきましょう。そういうふうにやって、世の中を幸せにできるようなことをやってくれると嬉しいです。

――素晴らしい。いやいや、全然知らなかった。

谷井玲

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