Historical Archives Research Center 歴史アーカイブ研究センター

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時代の流れとともに今日に至るまでの、日本のコンテンツ産業の歴史を知る“ヒトの証言”や“当時を知る資料”はますます貴重なものとなりつつあります。 歴史アーカイブ研究センターでは、それら一次資料をデジタルアーカイブし次世代に伝えます。

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最新トピックスNEWS

  • 2024
    108
    • Dialogue

    【副所長対談】井上伸一郎×浜村弘一

    “ヒトの証言”を記録するという 本プロジェクトの取り組みについて 

    井上 大変意義のある取り組みだと感じています。私事になりますが、最初に所属したアニメ雑誌の編集部の同世代の仲間が近年だけで3人急逝しています。これは急がなければいけないと思いました。

    作家の方はインタビューを受ける機会があるので、証言が比較的残りやすい状況ですが、業界を裏側で支えてこられた方々の証言はあまり残っていません。

    また、歴史的事実に基づいた客観的な評論というのもまだまだ少ないですね。1963年にTVアニメ『鉄腕アトム』がスタートし、今年で60年を迎えました(2023年現在)。あれから、さまざまなアニメが生まれ、それぞれに歴史があるにもかかわらず、すでに多くの証言が失われてしまいました。

    マンガやアニメが世界に誇るカルチャーとなった今も、“ヒトの証言”はあまり残されていないように感じています。


    浜村 ゲーム業界にも同じことが言えます。日本のゲームの歴史は約40年と、マンガやアニメに比べると日は浅いかもしれませんが、それでも日本のゲーム黎明期に活躍された方々の証言を保存することが難しい状況になってきました。例えば、アーケードゲームの場合だと、一度作った基板を別のロットに入れ替えることもあるため、時にデータが現存していないこともあります。

    歴史資産であるはずのゲームのハード/ソフトを全て保管している会社も少ないのが現状です。ゲーム業界の皆さんも「早く歴史としてアーカイブ化させないと」というのを常々話されています。


    井上 出版社の方も同じです。当事者の目線から文献として残し、多角的に分析していくことが重要だと考えています。例えば、ひとりの作家に対して、「俺が育てた」という編集者が何人もでてくることがあります。出版社ごとに担当編集がついていますから、当然なんですね。とはいえ、作家に対するアプローチは編集者ごとに異なります。このように、幾人もの人がひとりの作家を語ることで、多角的に作家の実像が見えてくることがあります。


    浜村 それはそうですね。ゲームの場合、作家や作品が注目されはじめたのは、ここ20年です。それ以前は、工業製品として認知されていました。さらに、当初はエンディングロールもありませんでしたから、誰が作ったのか外からは分かりにくい状態でした。ですから、人によって言うことが違うというのはたくさんあるんです。ただ、それら全てが貴重な証言なので、皆さまの証言を今こそ残さなければ、多角的な視点で物事が分からなくなるなと感じています。


    日本から発信することの意義について


    井上 日本式のマンガは、今や世界中で読まれるようになり、この遺伝子は世界に広まりました。しかし、現在、驚くようなスピードで海外で生まれた縦スクロール型のマンガであるウェブトゥーン市場が伸びています。日本のマンガ業界がきちんと歴史を保存しておかなければ、日本のマンガ文化が正しい歴史として世界に継承されないのではないか、という不安があります。


    浜村 ゲーム業界もそうです。もともとゲームはアメリカで生まれ、日本が独自に発展させた産業です。しかし、今、日本が作ったゲームの文化が、欧米のものになりつつあります。

    さらに近年は、スマートフォン向けゲームが伸長し、中国や韓国で生まれたゲームのシェアが増えてきました。日本のゲームの歴史をアーカイブとして残していかないと、誇りさえなくなってしまうのではないか、と私も危惧しています。


    井上 だからこそ、我々の世代が生きているうちに、業界のキーパーソン・クリエイター・技術者などへ取材を行い一次資料としてアーカイブ化し、その貴重な証言が未来の業界の発展につながればと思っています。


    浜村 日本のコンテンツが世界の中に埋没しないためにも、エンタメ産業の軌跡を言葉として残しておきたいですね。




    井上 伸一郎 副所長(写真左)

    1959年生まれ。東京都出身。'85年「月刊ニュータイプ」創刊に副編集長として参加。 '87年 ㈱ザテレビジョンに入社。以後、雑誌・書籍の編集者、アニメ・実写映画のプロデューサーを歴任。 '07年 ㈱角川書店 代表取締役社長、'19年 ㈱KADOKAWA代表取締役副社長に就任。現在はKADOKAWAアニメ・声優アカデミーおよびKADOKAWAマンガアカデミー名誉アカデミー長。

    浜村 弘一 副所長(写真右)

    1986年、ゲーム総合誌『週刊ファミ通』創刊から携わる。『週刊ファミ通』の編集長に就任したのち、株式会社エンターブレイン 代表取締役社長、株式会社KADOKAWA 常務取締役を経て、現在は同社 デジタルエンタテインメント担当 シニアアドバイザー。一般社団法人日本eスポーツ連合理事、一般社団法人デジタルメディア協会理事、株式会社GameWith社外取締役、立命館大学映像学部客員教授を務める。

  • 2024
    26
    • Oral History

    【ネット文化】「日本のインターネットの父」村井純氏へのインタビューを実施

    2023年11月22日、計算機科学者で「日本のインターネットの父」と呼ばれる村井純氏に、インターネット黎明期の技術やコミュニティを主なテーマとした、オーラル・ヒストリーのインタビューを行いました。

    インタビュアー:伴 龍一郎(研究員)

  • 2024
    21
    • Event

    フォーラム「日本のゲームアーカイブの現在と未来を考える」を共催しました (2024年1月28日・オンライン開催)

    2024年1月28日、立命館大学ゲーム研究センター主催、ZEN大学(仮称・設置認可申請中)歴史アーカイブ研究センター共催、ゲームアーカイブ推進連絡協議会の協力で「日本のゲームアーカイブの現在と未来を考える」をテーマとしたフォーラムがオンラインで開催されました。


    ゲーム保存の重要性と産官学連携の強化を目的とした今回のフォーラムは、前半では、歴史アーカイブ研究センター所長 細井浩一による趣旨説明の後、参議院議員の赤松健氏による「アーカイブ哲学の実践」と題した基調講演が行われました。


    フォーラムの後半では、赤松議員の他、株式会社スクウェア・エニックス AI部 ジェネラル・マネージャーの三宅陽一郎氏、元ハル研究所代表取締役でゲーム保存協会名誉会員の三津原敏氏、歴史アーカイブ研究センター 副所長の浜村弘一ら、業界のキーパーソンが参加して国・産業・大学の立場からゲーム保存の現状と課題について考えるディスカッションが行われました。

ミッションMISSION

日本のコンテンツ産業は、現代を代表する表現文化として世界に大きな影響を与えてきました。また、現代的で総合的な文化創造産業として、国内外で大きな存在感を持つようになっています。本センターは、その歴史を形作ってきたヒトやモノやコトに関わる一次資料を広く深く収集、保存するアーカイブを構築し、研究や教育、事業創造など社会的な利活用のために公開していくことを使命とします。

メッセージMESSAGE

所長 細井 浩一のご挨拶
副所長 井上 伸一郎×浜村 弘一の対談