1年次に学生全員が受講する必修科目「アカデミックリテラシー」では、ZEN大学で学ぶことの意義や大学のカリキュラム制度、学生自身が課題や目標を設定し、新たな答えを探していくための方法などを学修していきます。今回は「学修の目的を考える」をテーマに、元文部科学副大臣で「公共哲学」や「ソーシャルイノベーション概論」を担当する鈴木寛・評議員と、社会学や都市研究が専門で「大学とメディアの人類史」などを担当する吉見俊哉・特別招聘教授による授業の一部をご紹介します。
これまでの価値観が覆るような新しい時代への大変革期
鈴木:現代は、先行きの見えない不確実な時代であるといわれています。しかしこれは古い時代が終わり、新しい時代が生まれつつある歴史の大変革期に、私たちがいるということです。私はこの新しい時代を「卒近代」と呼んでいます。これまで人類は物質的な豊かさを求め、そのおかげで我々の暮らしも豊かなものになりました。これからの時代は、物質的な豊かさだけではなく、心の豊かさや社会的な豊かさ、つまりウェルビーイングも目指していくような流れに大きく変わりつつあります。“いのち”の大切さを再確認し、いのちが輝く未来社会を作っていかなければなりません。
地球を見渡すと、砂漠化や水源の消失などさまざまな環境問題が生じています。また社会では民主主義の機能不全や国民の分断化、多様な格差など課題が山積みです。一方で、AIをはじめとするテクノロジーの進歩により、近い将来、いまある職業の約半数がAIやロボットに置き換えられるともいわれています。これまでの価値観や常識が根底から覆ってしまうような新しい時代において、本当の幸福とは何なのでしょうか。いま一度見直す必要が生じています。
「卒近代」は若者にとってチャンスの時代です。新しい時代を作るのは無名の若者たちであり、新時代を開く「エポックメーカー」に必要なのは、能力よりもむしろ強い志だと私は思っています。我こそはと思う人は、ZEN大学で試行錯誤しながら一緒に新しい時代を作っていきましょう。
歴史から紐解く21世紀型大学の在り方とは
吉見:これまでの価値観が大きく変わる卒近代の時代にあって、先行きを見通す力を学べるのが大学です。ではそもそも大学とは何でしょうか。その歴史から見てみましょう。
ヨーロッパでは12〜13世紀、知識を求めて都市間を旅する教師と学生の協同組合である「ユニヴァーシティ」が生まれました。やがて彼らが知識を求めて集まった場所が大学の原型となっていきます。つまりヨーロッパの大学とは、移動の自由を根本として横につながる「リベラルの知」の場だといえます。
一方、日本では、8世紀の官僚養成機関である「大学寮」をもとにして、明治時代の大学が作られました。日本の大学はヨーロッパの「ユニヴァーシティ」とほぼ同じものとみなされていますが、ユニヴァーシティが旅する教師と若者の「ヨコの原理」であるのに対し、大学は国家が官僚を養成する「タテの原理」であるという大きな違いがあります。
ヨーロッパで生まれた中世・近代の大学は、優秀なキリスト教徒・国民を育て、医学や法学など実学的な学問を探求する目的遂行的な組織でした。これに対して21世紀の現代はデジタル革命とともにグローバル化が進み、地球社会を前提とした新しい大学が求められています。21世紀型の大学が育てるのは「地球人」であり、優秀な地球人に必要なのは、「目的遂行的な知」と、哲学や美学など多角的な視野から目的を提起できる「価値創造的な知」の“二刀流”であることです。みなさんには、異なる知識を身につけた複眼的地球人になれるよう、21世紀型の大学、すなわち「第三世代」の大学とも言えるZEN大学で学んでほしいと思います。
オンライン大学で教育・研究・社会実践の一致が可能に
鈴木:私がZEN大学で実現したいと思っているのは、「旅する教授と学生」です。バーチャルでもある程度のリアリティは感じ取れますが、やはり気候の違いや地元の人とその土地の美味しいものを一緒に食べる経験など、現地に行かなければ分からないことがたくさんあります。ZEN大学では12道県19地域の自治体と連携し、25を超える1カ月から3カ月の滞在プログラムを用意*していますので、自分の五感や身体で感じる経験をたくさん積んでほしいと思います。(*2025年3月現在)
吉見:19世紀には、教育と研究を一体化することが大事だとする新しい形の大学が作られました。しかしこれからの時代は、それに加えて社会実践も必要になってきます。バーチャル空間では経験できない現場の実体験やリアルなつながりが新しい世代に必要なのです。
各地でいろいろな社会実践をしながら、大学の授業やゼミに参加することできるオンライン大学は、教育・研究・社会実践の一致が非常に実現しやすい大学形態です。ZEN大学は、いわばオンラインで復活した「移動する大学」だともいえますね。
鈴木:教育・研究・社会実践を一致させた21世紀型の大学は、これからどんどん増えていくでしょう。そのパイオニアとしての役目を担うZEN大学のこれからに、ぜひご期待ください。
※本内容は、2025年時点の収録内容に基づきます。
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