【ZEN大学すずかんゼミ】AI×文理融合が生んだCM作品:難関の学術論文映像化に挑む

ZEN大学すずかんゼミ」では、2025年5月の開講以来、学修活動からプロジェクト型学習に至るまで、生成AIの活用方法を実践的に学んできました。

有志を対象に出された夏休みの課題は、「英語で書かれた理系の専門的な学術論文を読み解き、その内容を、一般の人にも伝わるCM映像として表現する」というもの。この難しい取り組みに、22名の希望者がグループを組み、日頃ゼミで習得した生成AIの知識と仲間とのチームワークを最大限に活かして挑みました。

6つのテーマとAI活用:先生の想像を超えるクリエイティビティ

9月25日(木)にオンラインで開催されたプレゼンテーション会では、6つのグループが、工学、物理学、数学、芸術科学など多岐にわたる専門論文を題材にしたCMを発表しました。

ゼミ生たちの作品は、ただ論文を翻訳・要約するに留まらず、AIを駆使した高いクリエイティブ性を見せました。

グループ①:論文テーマ「グラフィックアートの色の分析とAI」

レーザー照射で物質内部の化合物を明らかにする「ラマン分光法」とAI技術を組み合わせ、歴史的芸術作品を傷つけずに高精度で分析する可能性を探るという論文をもとに制作されたCMは、「科学×AI」が日常生活といかに密接に関わっているかを実感できる、ドキュメンタリー番組風の動画となりました。

架空の放送日を告知するCMも制作したこのチームの作品は、論文の理解度とクリエイティブ性の両面で高い完成度を見せ、若山学長から「論文の骨格を読み取ると同時に、AIに何を学ばせたらどの程度のことができるのかを実感できていることが整然と伝わってきた」と評価されました。

グループ①の作品

グループ②:論文テーマ「カーボン・オフセット」

多くの企業がネットゼロ戦略にカーボンオフセットを含めているものの、主張されているような排出量削減効果をもたらしていないという懸念に焦点を当てた論文を取り上げたグループは、伝える対象を小学生とその保護者に設定し制作しました。

論文の内容をAIで翻訳し、全員で内容を共有したうえで、メンバー考案の歌詞をAIに手直しさせ、AI音楽アプリ「Mureka」で作曲。アニメーションと歌を用いて分かりやすく伝えることを目指しました。また、GeminiやChatGPTなど複数のAIツールを駆使し、中高生向けのやや高度な内容の動画も制作。無料アカウントの制限内で最大限の表現を追求することにも挑戦しました。音楽と映像を融合させた工夫された、楽しく学べるコンテンツという点が高評価となりました。

グループ②の作品

グループ③:論文テーマ「量子」

ZEN大学・池田達彦准教授の論文を選んだこのグループは、内容の難解さを逆手に取り、「興味を持った人に読んでもらい、教えてもらう」ことを目的にCM制作に取り組みました。

漫才のような構成で、抽象的な概念をプリンやハートといった親しみやすいモチーフに置き換え、テンポよく解説するユニークな動画を制作。NotebookLMやGeminiを活用し、論文の理解を深める工夫をしながらも、「ニュアンスの微調整はAIには難しく、人間の感性が必要だと実感した」と述べたメンバーに対し、若山学長は「実践の中でAIの本質に気づいていることに才能を感じた」と高く評価しました。

グループ③の作品
グループ③の作品

グループ④:論文テーマ「音楽とAI」

AIがもたらす革新と、それによって生じる混乱と倫理的・法的な課題の両面を捉え、音楽産業の未来を考える上での重要な論点を包括的にレビューしているこの論文を選んだチームは、可愛らしいキャラクターを使って内容をわかりやすく解説しました。

Veo3(キャラクター動画)、SUNO(音楽生成)、vrew(音声・BGM)、ChatGPT-5(シナリオ・キャラクターデザイン)など、用途に応じてAIツールを使い分け、印象的なキャッチコピーも作成し、完成度の高いCMを発表しました。

「ゼミで学んだツールのおかげで、論文の理解からCM制作まで10時間ほどで完成できた」とスピーディかつ質の高いアウトプットをAIを活用して実現しました。

この論文を推薦した「すずかんゼミ」スタッフの池田陽介氏は「論文をきちんと読み解き、伝えたいことを的確に表現してくれた。音楽をグラフィックで捉えることで、波形に関わる物理や数学の世界にも理解が広がる。好きなことを起点に異なる学問分野へと横断することで、学びが広がるはず」とアドバイスを送りました。

グループ④の作品
グループ④の作品

グループ⑤:論文テーマ「ゴムの破壊」

作道准教授による、なぜゴムの亀裂が高速で進むと鋭くなるのかという長年の課題を世界で初めて物理学の基礎方程式から解析的に(数式で)証明した論文をもとにしたチームは、「身近な科学ミステリー ~ゴムが速く切れるほど鋭くなるのはなぜ?~」と題し、段階的に丁寧に解説する動画を制作しました。

論文の読み合わせから動画制作までの大部分にGeminiを使用。担当した学生は、AIによる翻訳や要約の過程では、意味やニュアンスの変化に苦労したといいます。専門性の高い内容を映像化する難しさもあり、スライド中心の構成となりましたが、「難解な論文に取り組む中で、物理や数学の面白さに気づくきっかけにもなった」と話しました。

作道准教授は「自分の授業よりわかりやすいと感じる部分もあった。短期間でもAIを使えばここまでできるという可能性を示してくれた」とコメントしました。

グループ⑤の作品
グループ⑤の作品

グループ⑥:論文テーマ「数学」

若山学長による「非対称量子ラビ模型の隠れた対称性に関する考察」という、極めて専門性の高い論文に挑戦したグループは、膨大な英語の専門用語に苦戦しながらも、メンバーそれぞれの強みを活かして役割分担し、進捗共有やフォローアップを徹底。AI活用とチームワークで得た理解をもとに、CMの構成を練り、複雑な内容をわかりやすく伝える表現を模索しました。

発表も、音楽にのせて感想や振り返りを行うという斬新な方法で実施。若山学長は「ごく一部の方々しか読まないこの論文を手に取ってもらえてうれしい。可愛いCMを英訳して国際会議で流したい」と評価しました。

グループ⑥の作品
若山学長

AIとチームワークを駆使して「大学の学びの本質」に挑む

すべての発表が終了した後、審査員とゼミ生による投票で優秀作品が発表されました。

  • 池田陽介氏

池田氏は「量子」チームに投票。「理系の論文に挑戦した点が高評価で、演出の工夫も際立っていた」とコメント。 すずかん先生は「この企画をやって本当に良かった。とてつもない難関に挑むことこそが大学の学びの本質。AIとチームワークを駆使して絶壁に食らいついていけた」と総評。「数学」チームの作品については「教育コンテンツのフォーマットとしての可能性を感じる。紙で読みたくない内容も、この世界観なら引き込まれる」と評価しました。また「グラフィック」チームに一票を投じた若山学長は「論文の骨格を読み取ると同時に、AIに何を学ばせたらどの程度のことができるのかを実感できていることが整然と伝わってきた」と振り返りました。

作道准教授は、次のように総評を述べました。

「どのグループもかなりの時間をかけて論文を読み込み、ハイレベルな成果物を作り上げたことが素晴らしい。今回身につけたスキルや、グループ内で築いた人脈は、今後さまざまな場面で活かされるはず。他のグループにも積極的に声をかけ、情報交換を続けながら切磋琢磨していってほしい」

結果は、ゼミ生票も含めて投票が集まった数学チームが優勝となりました。

  • 鈴木寛先生

文理の境界を越える実践にAIが寄与

今回取り上げた学術論文はすべて英語で書かれたもので、普段は触れる機会の少ない専門性の高いものが多く、読解だけでもハードルが高い取り組みです。それをさらにCMの映像として表現するという難しい課題に、ゼミ生たちは果敢に挑みました。

これまでゼミで学んできた生成AIの知識と、仲間とのチームワークを最大限に活かし、先生方の想像を超える成果を発表できたことが大きな成果となり、また文系・理系の境界を越えて互いの分野に興味を持ち、行き来したくなるような動機づけとなるプレゼン会となりました。

すずかんゼミが掲げる「文理融合」の理念が、まさに形となって現れた瞬間でした。


取り上げた論文:

▼イラスト・グラフィックアートの色の分析とAI:池田陽介氏推薦

Francesco Armetta, Monika Baublytė, Martina Lucia, Rosina Celeste Ponterio, Dario Giuffrida, Maria Luisa Saladino, and Santino Orecchio (2024) “Chemistry of Street Art: Neural Network for the Spectral Analysis of Berlin Wall Colors”


▼カーボン・オフセット:学生要望枠

Gregory Trencher, Sascha Nick Jordan Carlson, and Matthew Johnson (2024) “Demand for low-quality offsets by major companies undermines climate integrity of the voluntary carbon market”


▼量子:池田達彦准教授の論文

Tatsuhiko N. Ikeda and Masahiro Sato (2020)  “General description for nonequilibrium steady states in periodically driven dissipative quantum systems”


▼音楽とAI:池田陽介氏推薦

Jan Mycka and Jacek Man ́dziuk (2024) “Artificial intelligence in music: recent trends and challenges”


▼ゴムの破壊:作道直幸准教授の論文

Hokuto Nagatakiya, Naoyuki Sakumichi, Shunsuke Kobayashi, and Ryuichi Tarumi (2025) “Analytical Expression for Fracture Profile in Viscoelastic Crack Propagation”


▼数学:若山正人学長の論文

Masato Wakayama (2018) “Symmetry of asymmetric quantum Rabi models”

Kazufumi Kimoto, Cid Reyes-Bustos, 

Masato Wakayama (2019) “Determinant expressions of constraint polynomials and the spectrum of the asymmetric quantum Rabi model”

Cid Reyes-Bustos, Daniel Braak, and Masato Wakayama (2021) “Remarks on the hidden symmetry of the asymmetric quantum Rabi model”

※上記、若山学長が研究されている”Rabi model”についての論文から1つチョイス、ないしは、3つまとめて取り組む。

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