ZEN大学では2025年9月12日〜17日の6日間、沖縄県うるま市の伊計島で約100年にわたって島の買い物や福祉機能を担っている共同売店のDX化に取り組む地域連携プログラムを実施しました。参加した学生は、伊計自治会、うるま市、一般社団法人プロモーションうるまの協力のもと、課題のリサーチからプランの作成、成果発表に取り組みました。
今回は、プログラムに参加した齋藤綺さんのレポートをご紹介します。

海の向こうの小さな島で、「地域の拠点」を未来につなぐ挑戦をしました。舞台は沖縄県うるま市・伊計島。約100年続く共同売店で、ICTやAIの力を“使いやすく、続けやすく”する実践に取り組んだ6日間です。
① なぜ参加したのか—“自分ごと”としての地域課題
私は青森県平川市の出身で、人口減少や少子高齢化といった課題を身近に感じてきました。伊計島の共同売店プロジェクトは、そうした課題に直結する「暮らしの現場」に入る貴重な機会でした。ICTやAIの知識を現実の課題にどう応用できるかを確かめたい—それが最大の動機です。高校時代の課題探求型の発表活動で、テーマ設定から実装まで主体的に進めた経験も後押しになりました。今回は「与えられたテーマにチームで挑み、地域に貢献する」ことに魅力を感じ、共同売店のDXという具体的な課題解決に自分のスキルを生かすことを目標に参加しました。
② どんなプログラムで、何を学べたか—“機能”より“運用”
プログラムは「島を知る→課題を定義→小さく作る→使い方まで設計→島民へ提案」という流れで進みました。私のチームは、売店の“日々の負担を減らす”ことを軸に、株式会社リクルートのアプリ「Airレジ」導入によるレジ運用の改善と、商品登録・在庫の初期整備に取り組みました。具体的には、iPadでの操作性を検証し、現場の方が迷わず扱えるよう短い操作手順動画(準備編/販売編/新商品登録編)を作成。さらに、商品のバーコード(JAN)の整理や、CSVを用いた一括登録の下準備を進め、導入初期のつまずきを減らす工夫をしました。
ここで痛感したのは、DXの肝は“機能の多さ”より“運用の軽さ”であることです。どれほど高機能でも、日々の業務負担が増えれば続きません。そこで私たちは、
(1)覚えることを最小限に、
(2)紙とデジタルの併用を許容し、
(3)操作に迷ったら動画で即復習できる
—という三つの条件を満たす設計を徹底しました。これらの設計により、担当者が変わっても同じ手順で登録が進み、作業が属人化しにくい体制を目指しました。
現地の共同売店利用者でもある、N高等学校の校長からは「こういう仕組みを待ち望んでいました」といった反応をいただき、手応えを感じました。
③ 参加してどうだったか—“続く仕組み”まで設計する
想像以上に検討範囲は広く、レジ操作だけでなく商品マスタの整え方、バーコードの扱い、レシート体裁、在庫更新のタイミングまで、細かな論点が次々に現れました。Airレジの導入検討にあたっても、登録作業のコツや運用の分担を具体化する必要があり、現場の職員向けの操作手順動画を作るなど“ひと手間”を惜しまない対応が欠かせませんでした。6日間という時間はやはり短く、課題の洗い出し→解決策の策定→試作に加えて、現場で“使い続けられる”形に落とし込むところまで踏み込むと、継続的な伴走の必要性を強く感じました。
また、参加者全員で“お土産交換”を行い、各地の銘菓や名産を持ち寄って交流しました。小さな贈り物のやり取りは、チームの空気をやわらげ、学びの場に暖かさを添えてくれました。
左:Airレジ導入の検証。バーコードスキャナとiPadでの運用テスト。中央:提案内容を作成。右:別班の広報物。販売物の魅力を印刷物とSNSで発信する取り組みに挑戦。
最後に。ありきたりではありますが、人と人とのふれあいの大切さをまざまざと感じたところでした。都会での生活の経験はありませんが、地方ならではの光景に感心しました。例えばレジ前の会計の現場で、お店の方がお客様に「その商品、この前も買っていましたよ」とさりげなく声をかけて見守ったり、最近お見かけしない方に連絡を取って安否を確かめるなど、え?そんなところまで?—という交流の現場のお話を聞き、胸が熱くなりました。
こうした“暮らしを支える目配り”に、DXが静かに寄り添う姿を思い描きながら島を後にしました。ZEN大学の学びは、教室を飛び出し、地域とつながったとき、まったく違う世界を見せてくれます。
















