ZEN大学では、2025年11月10日から15日までの6日間、オーストラリアでのフィールド研修を行いました。参加した学生は、再生可能エネルギープラントの視察や現地のフリンダース大学でのグループディスカッションなどを通じて地球規模で抱えている課題の実態を知り、その解決に向けた取り組みを実体験することで自らがどう行動していくべきかを考えました。
今回は、研修に参加した板垣さんのレポートをご紹介します。
循環型社会の実現に向け、自分なりの答えを探したい
研修に参加した理由は、「循環型社会の実現に向けた自分なりの答えを探す」という強い問題意識があったからです。特に、現代社会の複雑な課題の解決には、日本国内だけでは見えない「現場のリアル」に触れることが不可欠だと感じました。
クリーンエネルギー先進国・オーストラリアでの、再生可能エネルギー導入における企業(Vena Energyなど)・行政・市民の連携と、経済性・持続可能性の両立を実地で学び、日本のエネルギー課題に新たな視点を取り込みたいと考え、参加を決意しました。
オーストラリアと日本の意識の違いを分析
研修中に最も苦労したのは、現地学生との意識調査の分析と、その後の要因の深掘りでした。特に、日豪の学生間で「再生可能エネルギー政策による生活費上昇を支持するか」という設問に顕著な意識差(豪49.0% vs 日5.3%)が見えました。
この差異が環境問題に対する意識の違いではなく、経済合理性に基づく判断による違いではないかと考え、次のような仮説を立てました。
・オーストラリアの若者:再生可能エネルギーを「未来への投資」と考える。投資=将来的なリターンが期待できると考え、現在の一時的コスト負担を許容する姿勢を示している。
・日本の若者:再生可能エネルギーを「現在の(電気代が上がる)コスト増」としてしか捉えられておらず、コスト増を拒絶しており、経済合理性に基づく合理的な防衛反応であると言える。
これに対し、チーム内で深夜まで徹底的に議論を重ね、帰国後、Vena Energy訪問での学びを次のように捉えました。
1. プロセスへの信頼(SLO):オーストラリアでは、地域住民と対話を続ける企業の姿勢が「コストを払っても応援する」という信頼の土台を形成している。
2. メリットの実感(Benefit Sharing):オーストラリアでは、地域住民に目に見えるかたちでメリットがもたらされている(雇用の創造やスポーツチームのスポンサーシップなど)。
3. 主体性の教育(Agency):オーストラリアでは、「技術で未来は変えられる」という効力感のある教育を受けている。
そして、オーストラリアと日本の学生の間にある本質的な違いについて、時間軸と信頼の壁という2つの観点から以下のように結論づけました。
<時間軸>
・日本:現在の生活維持に固執し、変化=リスクと捉える不信のサイクルにある
・オーストラリア:未来を信じ、変化=チャンスと捉える信頼のサイクルにある
<信頼の壁>
・日本:再生可能エネルギーを「誰かが決めた義務的な負担」と捉えている
・オーストラリア:再生可能エネルギーを「私たちが選ぶ未来への価値」と捉えている
朝型の生活習慣と都市構造がエネルギー効率に貢献
プログラムの最大の成果は、オーストラリアの再生可能エネルギー率上昇の背景にある「未来志向、国民の考え方(Well-being)」に触れたことです。広大な土地や政策的な優遇だけでなく、市民がコストを払ってでも環境を支持する「未来志向の姿勢」こそが成功要因だと感じました。
この成果を裏付けるものとして、朝の散歩で肌で感じた日照を軸にした都市構造と生活の存在があります。早朝5時半から交通音が響き、7時には庭師や塗装業者、ゴミ収集に携わるワーカーを街中で多く見かけました。この国全体に浸透する朝型の生活習慣と、ブリスベンのような合理的な碁盤の目状の都市構造が、日照を最大限に活用し、エネルギーと生活の効率性を高めていることに気づきました。
現地で得た学びを「構造的理解の徹底」と「行動の継続」へ
帰国後は、現地で得た学びを「構造的理解の徹底」と「行動の継続」に繋げます。
まず、日豪の意識差の背景にある「見えない構造や全体像」を、表面的な「0か100か」の二項対立で終わらせず、多角的に考察する力を継続して養います。これは、物事の背景や裏側の見えないところまで想像する力を身に付ける試みです。具体的には、高校時代から続けている対話コミュニティを、二極化を避けて合意形成を目指すナラティブとプロセスの転換を試みる場として活用します。
さらに、日本のエネルギー政策や合意形成の課題を経済の視点からも深く理解するため、事業者の一次情報(決算資料、企業戦略、地域貢献事例など)にあたったり、研究者から情報を得たりと、継続的に収集・分析し、未来への判断の解像度を高めていきます。







